星辰航路

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弱肉強食の考えに(のっと)ったか、人類は遺伝子汚染など気にせず、自らの遺伝子を宇宙へ送る事に躍起(やっき)になって行ったのだ。 でも、この賭けは負けなのだろう。 人が命を繋ぐには、まだ足りなかった知識と技術。 もしかしたら、地球産の生命の一つぐらいは生き残るかも知れないけれど。 そう、僕の体の中にさえ幾億もの細菌が巣食っているのだから、生きる術に長けたどれか一つが生き延びこの地に根付くかも知れない。 人類が生き延びられないのだから、やはりこの賭けは負けなのだろうが。 負けでも生きて新天地に立てた僕は果報者だ。 新たな台地に降り立ち、僅か一日の時を経ずに別惑星の知性体と交流できたのも。 止めたくても、(あふ)れ、次々と零れ落ちる涙の雫。 収斂(しゅうれん)進化の賜物(たまもの)なのが、人に良く似た指先は滴り落ちる涙をそっと(ぬぐ)っては払い続けてくれている。 震えているのは、僕を傷付けない為に細心の注意を払ってくれているからか。 言葉は通じないのに、仕草だけで彼女が僕を深く慈しみ、憐れんでいるのだと感じてしまうのは勝手な思い込みなのかも知れないけれど。 こんなにも美しい存在に看取られるなら、この愚鈍(ぐどん)な命は誰よりも幸せだ。
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