星辰航路

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(私は副女王の一つ。次の世代を(にな)うべき存在) 言葉と共に流れ込むイメージに、真社会性のカーストを作り上げる昆虫を思い出した。 蟻や蜂の仲間に多く見られる、一個体が一つの命として機能するのではなく、一つ一つの個体が群れて巨大な生物の如く機能する性質を持つ集団。役割を分担する様子は、受精卵が分裂するにつれて皮膚や心臓、脳や骨と言った多彩な細胞へと分化し一つの多細胞生物へとなるのに似ている。 超個性と、一個性ではなく集団の動きを捉えて呼ぶ名が有った程に、群れの動きは単純な命令系統に支配されて一つの巨大な生命となるのだ。 「副……女王は、他にも?」 (居ます。母たる今の女王は老いを迎え、次の世代を担うべき存在として私達は特別に作られました) (貴方を伴侶とすれば、私は他の副女王より強く成れる可能性があります) 異性との交わりは、確かに遺伝子の多様化を新たにもたらすだろう。閉じた世界に、均質化した遺伝子に、新しい形質を与え集団で滅びてしまう危険の回避に繋がる交接。 (淘汰(とうた)が始まるのです) 「淘汰……」 現女王に()べられた命を駆逐(くちく)し、新女王はこの星に君臨しなければならないのか。
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