星辰航路

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無慈悲に思うけれども、生き残りを()けた戦略ならば当然の事実として命の間に連綿とやり取りされて来た事だ。それは未来永劫続く(のが)れられない宿命とも言える。 生命の営みは生きる場所の獲得に他ならない。僕等が数世紀の時を掛ける旅をして、この地に辿り着いたのさえ生きる場所を新たに求めた結果だ。 (私は貴方を伴侶に求めたい) 透き通る宇宙の暗闇の如き瞳が、真っ直ぐに僕を映し出している。 背景に、数瞬も持たない幾筋もの光条を乗せ。 今では降り注ぐ光の雨となり、暗闇の中を流れ落ちる星々。 パンスペルミアが正しいのだとしても、遠く離れた異星の命との交流は束の間でしかなく、交わるとなっても交接は容易に行えるとは思えなかった。 (心配しないで……。私達は形質を相手に合わせられる) そうだ。遺伝子を作り上げるアミノ酸にも、たんぱく質にも一定のパターンがある。決められた位置に繋がる事しかできないながらも多彩な数の組み合わせで、僕達も数多くの形質や遺伝子を作り上げて来たのだ。たった四つの塩基を始まりとし。 なんと言う命の玄妙(げんみょう)さ。 ハピタブル(ゴルディロックス)・ゾーンの制約が交流の奇跡すら約束していたなんて。 命の始まりが特定のパターンに(しば)られるなら、同じ塩基を使っている可能性は高い。
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