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僕と島田さんが雫を見送ると、辺りはもう暗くなっていて、明かりとしては心もとない公園の街灯だけが僕達の影を照らし出す中。僕は島田さんとベンチに座ったまま、雫の事を説明していた。
「未来から来た翔君の娘ねえ……それを信じて一緒に住んでたって事?」
「そ、それは……そうだけど」
「私の所に来てたらまあ、信用しないだろうし、雫からしたら良い判断だとは思うけどね」
それが事実な手前僕が反論できずにいると、島田さんはからかう様に軽口を言って楽しそうに笑う。
「でも、父さんの事知ってたり僕しか知らないこと知ってたから、それに……」
「それに?」
僕がそこで言い淀むと、島田さんは優しげな声で続きを聞こうとしてくれる。
「あそこまで僕の事を考えてくれる人は、少なくとも他人じゃないから」
「それもそうだね」
僕のその答えを聞いて島田さんは笑ってくれるが、僕達はまだ友人が遠くに行ってしまった事実を上手く呑み込めていない様で、気を抜くと直ぐに静かな空間を作ってしまう。
「でも、相談してくれたらよかったに」
僕のそんな考えを悟ってか、島田さんは拗ねた様な声を出すが、それとは裏腹に少しだけ僕の方に近づいて来る。
「い、いや。娘って言ったら島田さんは意識しちゃうでしょ?それは雫も同じ意見みたいだったし」
「まあ、確かに親が誰なのか、とかは聞き出してたと思うけど」
聞いていたでは無く、聞き出していたと言った島田さんに少しの恐怖を覚えつつ、息苦しい程に近づいた距離を離そうと僕は少しだけ横にずれる。
「でも私にそんな隠し事してたんだから、雫の分も含めてちゃんと誠意を見せてくださいね?」
島田さんはそう言うと、僕が離れたことが分かっていながら、もう一度距離をつめてくる。
「せ、誠意とは……」
「そうだね。雫みたいに私ともデートして、それからまたお家にもお邪魔させてね」
「それは……雫の時とは違うじゃん」
島田さんの言う誠意に僕が首を横に振ると、彼女は拗ねた様に口を尖らせてまたグッと近づいて来る。
「でも、私だって嫉妬するんだよ?」
「……直ぐじゃなくてもいいですか?」
「うん!」
僕から言質を取ると島田さんは満足した様で、勢いよく頷いてから縮めた距離を元に戻す。
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