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「その、えっと……ともだち、です」
僕の覚悟はどうやら弱いらしく、ゴモゴモと小さい声で慣れない言葉を放つが、そんな僕の言葉に一向に誰も反応を示さない。
何も聞こえないことを不思議に思って、僕は恐る恐る顔を上げて辺りを見回す。
すると僕の目に入ってきたのは、雫と島田さんが驚いた様に口を開けたまま、固まって僕の事を見つめている姿だった。
「へ?」
聞こえていなかったのかと思い僕が気の抜けた声を出すと、二人は直ぐに反応を示すが、それは全くの正反対の反応だった。
「そ、そんな……柊君に、友達?」
島田さんはそう言って、崩れ落ちるように床に膝をつく。
「えへへ、友達」
それとは対照的に、雫は嬉しそうに口元を緩めながら僕の方を見てニヤついていた。
「ちょっと島田さん?!」
「そんな、柊君に友達ができるなんて……」
「ねえ、それちょっとひどくない?」
島田さんの気が抜けた声に僕がツッコミを入れると、彼女は目の焦点が合わないまま、立ち上がってフラフラと力ない足取りで自分の席に戻っていき、机にもたれ掛かるように勢いよく突っ伏してしまう。
「あの、島田さん?」
僕がそう語りかけても、島田さんは声を返すでも反応を示すでもなく、無視と言う行動と無音の圧力だけを返してくる。
そんな島田さんの様子に、僕はどうしたら良いのか分からず、助けを求めるべく雫の方を見て相談する。
「ちょ、雫どうしたらいいのこれ」
そう声をかけるも雫は雫で上の空のようで、僕の声が聞こえていないのか、彼女からも無音と言う答えが返ってくる。
「しかも名前呼び」
どうするのが正解なのかもわからず絶望しかけている僕の耳に、ボソっと聞こえてきた島田さんの低い声は僕の心にトドメを刺してきて、僕はどうすることも出来ないでただ思考を放棄して固まるしかなかった。
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