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雫はしばらくして落ち着いた様で、部屋の中を見回して何かに気が付いたのか、僕の顔を見て質問をしてくる。
「おじいちゃんは?」
雫から出てきた言葉に、僕は数秒の間ボケっと考え込んでしまう。
当然と言えば当然なのかもしれないが、雫からみた時に父さんはそんな風に映るのか、そんな当たり前なことに僕はついつい声を出して笑ってしまう。
「アハハ……ふぅ。いつも通り仕事に夢中だよ」
僕が笑い過ぎて涙を目にためて言うと、雫は僕の反応とは違い心配そうな声を出して疑問を投げかけてくる。
「……翔君は寂しくないの?」
「うーん、別に寂しくはないかな。なんだかんだ、気にかけてくれているのは分かってるから」
「でも、そんなの納得いかないじゃん」
雫は拗ねたように口先を尖らせながら、僕に聞こえるか聞こえないかの声で不満げに呟く。
「まあまあ」
僕は雫をなだめるように言葉を残すと、出かける準備をするべくソファから立ち上がる。すると、雫は座ったまま僕を見上げて不思議そうに小首をかしげる。
「どこか行くの?」
「どこかって、ご飯買いに行かないとだろ?」
僕は雫から出た疑問に当たり前のように答えを返すと、彼女が立ち上がりやすいよう右手を差し出す。
「うん!」
雫は僕の手を見つめて無邪気に笑うと、嬉しそうに返事をしてギュっと僕の手を握りしめて立ち上がった。
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