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空を見ると日の光は微塵も残っていなく、もう昼間のような温かさなど無くなった頃、僕達二人は制服から着替えることもせずに、近所のスーパーに足を運んでいた。
「なんだか制服デートみたいだね」
「うるさい」
僕の横をぴったりと歩いてニコッと微笑みかけてくる雫に、僕は心の中で動揺しながら雫の目線から逃げるようにしてそう言うと、雫は心底楽しそうにキャッキャと声に出して笑い始める。
その笑い声に、なんだか見透かされているような気がして、僕はもっと恥ずかしくなって彼女の方に目線は戻さずに前をだけを見て歩き続ける。
僕が何も考えず、慣れた様にスーパーの中を歩いてお弁当コーナーに向かっていると、雫はそのことに気が付いたのか、先ほどまでのテンションとはあからさまに違い、スンと空気が冷たくなるのを感じる。
「お父さん……」
「名前で呼びなさい」
僕はお弁当を吟味しながら、わざと雫の反応を無視して淡々と言葉を返すと、雫は何も言わないが突き刺すかのような視線をじっと背中に向けてきて、痛いという錯覚すら覚えさせてくる。
「翔君、今日の夜ご飯は何ですか?」
声色が無く無機質に告げられた雫の言葉に温度がないのを感じて、僕は逃げるのを諦めて雫の方に体を向けると、雫はパッと見は怒ってはいないようだったが、ただ冷淡に真っ直ぐ僕の目を見つめていた。
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