2日目前半

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2日目前半

1 「んぁ……今何時だ?」  僕は目を擦りながら独り言を呟くと、枕元に無造作に置いてあったスマホに手を伸ばして時間を確認する。  スマホの電源を入れると、温かさの無い無機質な光が顔いっぱいにあたって、僕は思わず目を細める。  直ぐに目は慣れてきて、表示されていた電子時計を確認すると、両親の写真に重なるようにして『5:47』と表示されていた。 「寝落ちてたのか」  微妙な時間に起きてしまった僕は、二度寝でもしようとスマホから手を放して仰向けになると、寝起きの少しぼやけた視界を塞ぐように目の上に腕を置く。  だが僕の気持ちとは裏腹に、目はもうしっかりと覚めてしまっているようで、僕は二度寝することを諦めてコーヒーでも飲むかと重い体を動かす。  すると、僕の横の敷布団の上で、見るからにサイズが合っていないブカブカな僕のパジャマを着た雫が、掛け布団を蹴り飛ばしたような状態で気持良さそうに眠っていた。  寝落ちる前に僕が考えていた事とは無縁のその光景に、どこか安心感すらも覚えて、雫が起きないように声を殺して静かに笑う。  僕はひとしきり笑い終えると、静かに立ち上がって雫を抱きかかえベッドに運んで、丁寧に布団をかけると、足音がならないように気を付けながら、ゆっくりとドアを開けてリビングに向かって歩いて行った。  僕は昨日入り損ねた風呂に入ると、洗濯を回して昨日の晩の皿を洗う。  そんな風に主婦の様な朝を過ごしていると、早朝から始めたという事もあってか思ったよりも早くにすべての用事が終わり、ソファに腰をつけて優雅にコーヒーを飲んでスマホを確認する。  スマホの中から僕の目に入って来たカレンダーには、明日の予定に『父さん帰宅』と書かれている。そんなものを無駄に確認していると、上の部屋から軽い足音が聞こえてくる。
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