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「さて、行こうか」
太陽の光が気持ちよくあたる午後の休日。僕と雫は張り切ってショッピングモールにやってきた。モール内の音は騒がしく、それでも僕達にとっては唯のBGMにしかならない。
そう思っていたのだが、現実はそう上手くいくものでもないようで、僕達は責め立てるような日差しから隠れるように、日陰のベンチに座り、耳に入ってくるショッピングモールの音は少し遠くから小さい音で聞こえてくる。
「雫の服を買いに来たのは良いんだが」
「何この人ゴミ」
僕達は休日の人の多さに気おされて、休憩するために人の少ない小蔭のあるベンチで、通り行く人を眺めながら休んでいた。
「僕はともかく、なんで雫までダウンしてるんだよ」
「私もお父さん譲りで、人と接するのに慣れていないの」
僕の横に座って休憩している雫は、ボーイッシュとは名ばかりで、僕の服を身にまとい白い顔をしながらも皮肉を漏らす。
「そうか、ならもう仕方ないな」
「うん。仕方ないんだよ」
思えば昨日も雫は、クラスのみんなに囲まれていた時にも顔色を悪そうにしていた。その光景が、今の彼女の顔とそっくりなことを思い出す。
そんな風にして僕達がベンチに座って休んでいると、急に近くから僕の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
「柊君?」
僕はその聞き覚えのある涼やかな声を聴いて、ハッとその音の方に目を向ける。
するとそこには、おしゃれな恰好をした島田さんが、僕の顔を除き込むようにして心配そうにこちらを見つめていた。
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