4日目後半

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12  私の両親はすごい人達だ。  その事は私にとっても一番の自慢で、二人の事を心から尊敬していた。ただ、それと同時にそれが嫌いだったのも確かだ。  仕事が忙しくてもちゃんと私を見てくれている二人が、私の事を大切に思ってくれているのは子供ながらに分かっていた。  そんな二人を見ていたからか、私はいつの間にかその背中に憧れて、二人の様な凄い人に成りたいと思うようになっていた。  私はその為に努力を始めた。勉強や運動そう言った目の前の課題を精一杯やり、その努力に結果はしっかりとついてきた。  私にはそれが嬉しくて、何か出来るたびに両親に話すと、二人は私以上に喜んでくれて、それもまた嬉しかった。  だけど、私の努力が両親以外の目に映ることは無かった。 「親の七光りだ」 「流石はあの二人の子供だ」  そんな言葉と共に、他の人の目には、私を通して親の姿が写っていた。  それらの言葉で、私の努力が全て無かった事にされている様に思えて、私は勝手に二人に黒い気持ちを感じ始める様になった。  それは私の体が大きくなる度に色濃く滲み出してきて、その事がまた嫌で、私はどんどんと両親から一歩引くようになって行き、それを周りのせいだと思い込んで、他の人すらも避けるようになっていった。  そんな私の気持ちに、最初に気が付いてくれたのも両親だった。 「大丈夫。周りが何を言ったって、僕達は雫の味方だから」  そう言って頭を撫でてくれたお父さんと、ギュッと力強く抱き寄せてくれたお母さんに、私はなんだか救われた気持ちになりながらも、その感覚に違和感を覚えて、それを拒んでしまった。 「なんでも出来る二人には分かんないよ……」  両親が努力家なのを知っている筈なのに、私から溢れ出て来た心無い言葉に、声に出した後になって気が付いて、私は自分の口を手で押えて部屋に逃げ込んでいった。
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