4日目後半

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 真っ暗な部屋で1人きりになった私はそのまま泣き寝入ってしまい、起きた頃には、夕飯の時間をとうに過ぎた真夜中になっていた。  泣きながら寝てしまったせいか、体を起こそうとすると頭に鈍い痛みが走り、咄嗟に額に手を当てて無理やり体を持ち上げる。  水だけでも飲もうとリビングに降りると、テーブルの上には、丁寧にラップがされた、冷めてしまった晩御飯が置いてあり、その光景に私の視界はまたぼやけてしまう。  私はまだまだ泣き虫なんだと実感しながらテーブルに近づくと、晩御飯の横に目立つ様にして置かれていた古っぽい制服が目に入り、なんとなく手に取る。 「これって、お母さんの?」  そんな独り言に反応するように、制服の隙間から一枚のメモがヒラヒラと主張をしながら床に落ちる。  私は頭が痛いのも忘れて、しゃがんでメモを拾い上げる 『私たちに相談しづらいなら、過去のお父さんにでも相談してきなさい』  メモにはそれだけしか書かれていなかったが、そのメモを読んだ私の心はどうしようもなく揺れ動いて、私は熱くなった目に力を入れて勢いよく立ち上がる。  立ち上がっても頭痛はそこまで気に成らなくて、私は急いでご飯を食べると、お母さんの制服に着替えて逃げる様にお父さんの研究室に向かっていった。 『この世界から逃げられる』 『昔の二人を見てみたい』  気持ち良い夜風を背にして走りながら、私の頭を埋め尽くしていたのは、優しさが嬉しかったなんかでは無く、そんな面白半分で子供の様な考えだった。  だけどタイムスリップした先で見た二人の姿に、私は拍子抜けしてしまった。  お父さんの目は自分の感情を抑え込んでいる様で、その先に何も見ていなく、それこそ私の知っているお父さんとは似ても似つかない、甘えることも出来ない只の子供だった。  お母さんもお母さんで、いつもと違ってはっきりしない態度で、素直になることが出来ない子供の様で、そんな幼い二人に私は驚きを隠せなかった。  それでもこの4日間二人の事を見ていると、仕草や話し方に私の知っている両親と重なる部分を見つけて、そんな事にどこかホッとしている自分が居た。  ただそれは、二人の事をどこかで親として見てしまっているという証明で、私の言った「友達」とは程遠くて、それが翔君を傷つけていた事も、私が1番子供だったの事も、今の今まで気が付かずにいた。  そのことがまた私の弱さを思い知らせてきて、私の心臓をギュッと握りしめてくる。  私が後悔のあまり泣きそうになっていると、突然ガチャリとドアが開いた音が聞こえて、私の体は動かなくなってしまう。
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