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5日目前半
1
痛いほどに明るい光が目を突き刺してきて、僕は目を覚ます。
いつの間にかソファで眠っていたようで、キンッと鳴る様な頭痛を感じて体を起こす。
すると、僕の体の上にかけた覚えのない毛布がかかっていて、その温かさに切なさを覚える。
僕が重い体を無理に起こすと、急に立ち上がったせいか立ち眩みがして頭を押さえながら俯く、その拍子に視界に入ったテーブルの上に、目立つ様にして一枚のメモが置かれていた。
立ち眩みが収まるのを待ってそのメモを手に取ると、そのメモにはボツボツと濡れた跡があった。
『帰ります。だから起きたら学校に行って、いつも通りに過ごしてください』
霞んでブレブレな字で書かれたその言葉を見て、僕の体はヒビが入った様に茫然と立ち尽くしてしまう。
僕はもう一度そのメモを読むと今度は直ぐに家の中を走り、自分の部屋、玄関、父の部屋など隈なく見て回った。
だがそこには、雫なんて人間は居なかったと疑わせる程に彼女の居た跡が無く、それはまるで世界が雫と言う人間を否定している様で、その錯覚が僕の瞳から色を奪っていった。
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