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「おはよう」
そう言って、いつも通り横の席に来て話しかけてくる島田さんに、僕は勝手に苛立ちを覚えながら普通を装って返事をする。
「うん、おはよう」
僕がそう挨拶をすると彼女の目は直ぐに鋭くなり、僕はその視線に耐え切れず咄嗟に俯いてしまう。
僕のそんな顔を見て、彼女は顔を歪ませた後に何かを言おうとしていたが、いつも通り人の波が現れて彼女の姿は見えなくなってしまう。
その光景にホッとしてしまう自分がいて、そんな自分がすごく嫌いで、僕は全てを拒絶する様に机に突っ伏して腕の中に顔を隠すと、周りの音が消えていくのを感じながら目を閉じた。
「翔君」
雫は僕をそう呼んで、こんな僕に対しても笑顔を向けてくれる。
その事がさも当然かの様に、僕を信頼して彼女はいつも本音で話してくれていた。
そんな雫の信頼に、僕は調子に乗って彼女の事など一切考えずに、彼女の優しさに甘えてしまっていた。
「翔君」
(ああ、ごめんな。お前の気持ちも考えないで……)
「翔君」
(お前のことを信じるなんて言って、こっちから一歩も踏み出そうともしないで……)
「翔君」
(こんな情けない親だけど、どうか、どうか……)
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