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「なんでまたここなの」
雫は呆れた声を出しながら空いた左手で頭を抱える。
「いやほら。僕も友達いないから、遊ぶ場所なんて此処しかわかんないし」
僕達は一度家に帰って着替えをしてから、つい先日も来たショッピングモールに訪れていた。
幸いにも平日という事もあって人は少なく、前回の様に人の流れに気圧される事は無さそうだ。
「もう、しょうがないなー」
雫は家から此処までの間もずっと繋ぎ続けていた手に少しの力を入れて悪態を付くが、彼女の頬は少しだけ緩んでいる様に見えた。
「まぁ、映画館とかゲームセンターとかあるしきっと大丈夫だって」
雫のそんな表情に僕まで嬉しくなっていると、横に居る雫から小さくギュルルとお腹の音が聴こえてくる。
「その前にご飯だな。朝飯食べられてないから僕も腹減ったし」
「翔君、うるさい!」
僕の精一杯のフォローの言葉はどうやら雫の気には召さなかった様で、僕の顔を見ずに強い言葉を返してくると、しっかりと手を繋いだままフードコートの方へと足早に向かって行った。
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