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一通り遊び終え、僕が休憩をしようと言うと、雫の提案で前回も座っていたベンチで休む事になった。
「はい。これ」
「ありがと」
まだ四月という事もあって、昼間を過ぎて外に居ると風が肌寒く、僕は近くにあった自動販売機で温かいコーヒーを二つ買ってから雫の横に座る。
「本当にカフェとか入らなくて良かったのか?」
「うん、これで良いの。それにほら、こうしてると初めて話した時の事を思い出さない?」
雫は僕の手から缶コーヒーを受け取ると、そのままコーヒー頬に当てて気持ち良さそうに目を閉じる。
「まあ、そうだな。たった4日前な筈なんだけどな」
「うん。そのたった4日の間に色々あったね」
雫の言葉を聞いて僕の頭に溢れてくる景色達は、そのどれもが色濃く鮮明で、そのたった数日に、僕の日常がどれだけ変えられてしまったのかを思い知らされる。
「いろいろあったけど、楽しかったな」
「そうだね。楽しかった」
僕達はそんな意味の無い言葉を交わして、時間が過ぎていくのを噛み締める。
この後の雫の結論が分かってしまっているからか、言葉を交わす時間でさえ勿体ない事の様に思えてしまい、僕はゆっくりと缶コーヒーを口に運ぶ。
だがそんな時間を壊したのは、雫が手を合わせたパン!という音だった。
「そうだった! 翔君に聞いておきたい事があったんだよ」
「なんだ?答えられることなら答えるぞ」
僕がその言葉を言い終えるよりも早く雫は僕の方に体を向けていて、聞く気満々といった表情で僕の顔を見つめていた。
「翔君ってさ。夢ってある?」
「夢?」
雫の急な質問に僕がそのまま言葉を返すと、雫は思い切り首を縦に振って、キラキラとした瞳を僕に向けてくる。
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