7人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
雫のその顔に釣られる様に、僕まで自然と笑顔を返してしまう。
そんな僕の顔を見て安心したのか、雫は大きく深呼吸をするとベンチから立ち上がって、僕達から離れる様に少しだけ歩いて振り返る。
「海ちゃん、いつまでもそんなのだったら翔君本当に奪っちゃうからね」
「だ、ダメよ!」
雫の言葉を聞くと、島田さんは主導権を主張する様に僕の腕にしがみついて、雫の方を見つめながら言葉を返す。
その様子を見て、雫は楽しそうに声を出して笑う。だけど直ぐに我に返ったように、真剣な顔になって誤魔化す事もせずに話始める。
「二人とも、本当にありがとうね」
「いや。こっちこそありがとう」
「ありがとう」
雫の感謝の言葉に僕も同じ言葉を返すと、いつの間にか落ち着きを取り戻していた島田さんも、僕に続ける様に声を出す。
「それじゃあ、そろそろ帰るね」
雫がそう言うと、その声に反応する様に彼女の周りが白く輝き始めて、不思議とそれが別れの合図だと分かる。
「おう、またな」
「ちゃんと帰ってきなさいよ」
僕達の言葉に雫はニコリと笑うと声だけを残して、その姿は光と共に一瞬でその場所から消えて無くなる。
「またね……」
最初のコメントを投稿しよう!