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エピローグ
「おかえりなさい」
聞きなれない無機質な声が耳に入ってきて、私はスッと目を覚ます。
「ただいま」
何も見えない暗闇の中で、私はその声の主に返事をする。
すると、その言葉を待っていたと言わんばかりに、私を包み優しく込んでくれていた機械が出口を示すように二つに分かれて、その間からやけに眩しい光が流れ込んでくる。
機械的に冷たく、だがどこか温かい対応に従う様にしてタイムマシーンの中から出ると、自分の体が強張っているのを感じて私は腕を伸ばしながら声にならない声を出す。
「どうでしたか?」
「うーん……」
優しげに告げられたその電子音声に、私は今までの事を思い出してしばらく考えてから、機械の方に振返って答えを告げる。
「楽しかったよ!」
私がそう言って笑顔を見せると、機械も笑ってくれた様な気がして、私は一人で嬉しくなってしまう。
「良い顔になりましたね」
電子音声で聞こえてきたその曖昧で人間の様な言葉に驚いてしまうが、私は言葉の代わりに飛び切りの笑顔を向けてそれに答える。
「それでは、私はスリープモードに入りますね」
「そっか。ありがとうね」
「……それでは」
機械が当たり前の様に告げた言葉に、私が少しの寂しさを覚えつつ感謝の言葉を返すと、機械は名残惜しそうに言いかけた言葉を歯切れの悪いところで止めてしまう。
私はそれが嬉しくなって、咄嗟にさっき聞いた言葉を告げる。
「うん。またね!」
「はい。また」
私は機械に一言で思いの丈をぶつけると、機械もまたその言葉を噛み締める様に返してくれて、荒々しい機械音を上げてスッと静かになってしまう。
そうして私は新しくできた友達一号を見送ると、物々しいその姿に向かって深々と頭を下げる。
「よし。じゃあ帰りますか!」
私は自分に届く様に大きな声を出すと、部屋の電気を消して、私なりの“わがまま”を伝えるべく、家に向かって駆け足で帰っていった。
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