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カタセヒロキは、目が見えないのだ。
これで全て説明が付く。彼が暗闇を恐れないことも、母親から口酸っぱく注意されていたことも、私の持論に抵抗していたことも。
それなのに、私はあのとき、見えないくらいなら死んだほうがましだと言ってしまった。
恥ずかしくて、彼に合わす顔などない。
このまま帰ろう。そう思いきびすを返しかけたところで、彼は焦点の定まらない視線をこちらに振り向けた。
「あ。コンドウマキさんですよね?」
どうして気づかれたのだろうかと思い戸惑っていると、
「ほら、やっぱり感じるものなんですよ。空気って」
その優しい微笑みに誘われるように、私は病室に一歩足を踏み入れた。
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