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その後の話を少し。
シェンとともに【赤い部屋】に戻ると、母はいなかった。〈星の旅人〉の男と逃げたのだそうだ。
母を失ったわたしは、【赤い部屋】を飛び出した。美しい母も顔も持たないわたしはもはやお荷物で、止める者は一人もいなかった。
いつの間にか作られていたわたし名義の口座に、名義不明でひと財産が振り込まれており、それを元に星系間シャトルに乗って、とある星で人工皮膚移植手術を受けた。
手術後、初めて見た鏡の中には、母そっくりのかんばせに、黒い瞳の女が映っていた。
母が眺め続けた、宇宙の闇の色だった。
母は天災のような女だった。
――けれど確かに、わたしの母だった。
〈了〉
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