四葉の幸せ

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四葉の幸せ

「三葉、あのね、私、結婚することになったの!」  そう言って、四葉は長い髪を揺らし、私に笑いかける。その手には、四葉の花束が握られている。正確には、草束って言ったほうがいいのかもしれない。 「そっか、おめでとう。お幸せに」 「うん、ありがとう! 三葉も、はやくいい人が見つかるといいね」  四葉は天使のような笑顔で、言葉の刃を放つ。私のいい人は、あなたが奪ったじゃない。  私こと三葉と、目の前で笑っている四葉は、二卵性の双子だ。けど、私達は決定的に違いがある。  四葉はぱっちり二重で、髪の毛もさらさらのストレート。本当にこのふたりから産まれたのかっていうくらい可愛い。  よく、可愛い子を”お人形みたい”って言うけど、四葉には本当にその言葉が合う。  一方私は、一重でいつも眠そうな顔をしているし、髪だってくせっ毛だ。1度髪を伸ばして、美容院のシャンプーやヘアマスクなんかを数カ月使っていたことがあったけど、私の頑固な髪は四葉のような髪になることはなかった。  顔だって、両親に似て平凡な顔だ。可愛くもなければ、ブスってわけでもない。どこにでもありそうな、ぱっとしない顔。  体型だって、ほとんど同じ体重なのに、四葉は全体的に線が細いくせに、胸が大きい。  私は太っているわけではないけど、細いわけでもない。ついでに、胸もない。脂肪が全身にまんべんなく行き渡っているって感じ。  だから、同じ体重なのに、四葉と並ぶと太って見えてしまう。  「本当に双子なの?」なんて言葉は、耳タコだ。私だって、好きでこんな平凡な顔に産まれたわけじゃない。  私達の違いは、見た目だけじゃない。  勉強だって四葉のほうができた。要領がいいのだ。私は要領が悪くて、どう勉強していいのか分からない。  算数にいたっては、簡単な暗算も難しいし、4✕5+6=みたいな算数は、紙に書いて指折り数えないと計算できない。  これは義務教育が終わってしばらくしてから知ったんだけど、私は学習障害だ。できれば学生時代に知りたかった。学生時代に知っていたら、どれだけ気楽な学生生活が送れていたことか。  
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