4人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
世界で私だけの特権
私と父が一緒に暮らし始めて1年が過ぎた
1年が過ぎても父は父のままだ
私はそれがなによりも嬉しい
ある時居間のソファに私が座っていると父が聞いてきた
「青葉ぁ 身長何センチ?」
「身長?この前測ったら158cmだったよ」
「158センチね わかった」
そう言うと父は 自分の部屋に行った
(わかった!? 何がわかったの父さん?)
気になったので父の部屋をこっそり覗くと
父はメジャーと鉛筆を手にとり部屋の柱に向かっていた
地面からメジャーを伸ばして背伸びして柱に印をつける父
印をつけた父は今度は定規を使いその印に鉛筆で線を引いた
「158cm......青葉」
私は静かに居間に戻った
(なぜ私の身長を柱に書いていたんだろう)
私はワクワクがとまらなかった
(私より大きくなりたいのかな? なにかのプレゼントの用意? まさかの親心?)
私の妄想は膨らむ
父はまだ125cmしかない
たぶんまだクラスで一番小さい
(あ、でも私が小学生の頃一番小さかった一馬は今180cmあるな・・・もしかしたら父さんもそんなに大きくなるのかな)
私は大きくなった父を想像した
私が父の顔を見上げる 私の歩幅に父が合わせて歩いてくれる 父にお姫様だっこをしてもらう
「楽しみだなぁ・・・」
にやけがとまらない
きっと世界中を探しても父親の成長を楽しみにする娘なんて私くらいだ
それもすべて父が私の父でいてくれるおかげだ
私は今日も父であたまがいっぱいだ
P.S.
次の日から小魚が食卓によく並ぶようになった
やはり父は私より大きくなりたいみたいだ
最初のコメントを投稿しよう!