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ある日の夕飯
「ただいま〜父さん お腹減ったよぉ♪」
私が家に帰ると父は夕飯の支度をしていた
「・・・おかえり 青葉さん」
父は料理上手だ だがたまに失敗をする
「んんー?どうしたんだい 翼くん」
失敗した時父は申し訳なさそうに私をさん付けで呼ぶ 一年経ったお決まりだ
「ちょっと失敗してしまったのです」
「ははは 大丈夫だよぉ 私お腹減ってるから 空腹は最高のスパイス♪ 手洗ってくるね」
申し訳なさそうにしている父もかわいい 父はいつも一生懸命だ
「どれどれぇ〜」
いただきますをして私は今日のメインの麻婆豆腐にかぶりついた
「美味しい〜えぇ 美味しいよ 全然失敗してないじゃん 父さん」
「食感が微妙なんだよ 青葉さん」
「食感? そおかな? 確かにいつもと違う氣はするけど」
「いつもは絹豆腐をクリーム状にして混ぜるのだけど 今日は木綿豆腐が安く売ってて 木綿豆腐使ったらうまくクリーム状にならなかったんだよぉ」
「うーん 言われなければわからないから大丈夫だよ 美味しいよ 父さん」
「そっかぁ よかったぁ」
父はたまに完璧主義者というか凝り性なところがある 父の基準では失敗なのかもしれないが 私の基準では父の料理はいつだって美味しい
(ま あのおばあちゃんと一緒に暮らしたらそうなるのか)
私は心の中でそう思った
「よかった よかったぁ」
父は安堵して箸をすすめた
「父さん 今日も美味しいご飯ありがとう」
「うん ありがとう 青葉ぁ」
父と一緒に後片付けをしていると父の携帯が鳴った 父の携帯はいつも居間のソファの前のテーブルにある 私はもしやと思った
「はい! はい!・・・来週ですね!わかりました」
父は軍隊の掛け声のような調子で電話に出てすぐ電話を終えた 間違いなく電話の相手は祖母だ
「母さんが 来週くるってぇ」
「そうなんだ 来週のいつ来るって?」
「それはわかんないって」
「そっか 来週のどこかね」
祖母が来週来る
最強の祖母が
来週 我が家は忙しそうだ
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