ともに生きる

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「もうえびの話なんて聞きたくない!」  そう言い捨てると、伝はその場から逃げ出した。制止する母の声を無視して玄関を飛び出し、住宅街を抜け、海沿いの道をがむしゃらに駆け抜ける。きらめく海面が目に染みて、視界が滲む。思わずぎゅっと目を瞑ると、ちらちらと涙が溢れる。けれどもそれは速度に押されてすぐに潮風に流されていった。すると次の瞬間、足に何かが当たって、ふいに地面にすっ転んだ。驚いて目を開けると、足元には缶が転がっていた。 「あーごめん、ごめん」  気の抜けた声と共に男が駆け寄ってきて、伝を助け起こす。 「大丈夫か?」  伝が起き上がる間も男は服に付いた土を払ってくれて、心配そうに様子を窺っていた。人見知りの伝は黙って頷く。 「あ、擦りむいちゃってるな」  確かに膝には血が滲んでいて、少しヒリヒリとする。すると、男は鞄からペットボトルの水を取り出し、傷を洗い流してくれた。さらに伝が出したハンカチを「やってやるよ。貸してみ」と受け取って、手際よくそれを膝に巻いてくれる。
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