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飛び上がって取ろうとしてもはぐらかされ、そんな姿を見て教室にいるクラスメイトはみんな笑っている。伝は情けなくなって、泣いてしまいたくなっていた。さらに追い打ちをかけるように机に置いていたランドセルをひっくり返される。伝の荷物が床に散らばって、えびのペンケース、えびのノート、様々なえび柄の小物が曝された。
「うえっ、エビばっか! 気持ち悪ぃ!」
田高はその山にハンカチを投げつけ、嫌そうな顔を見せつける。伝は慌てて荷物をかき集めて、鞄の中に戻した。その背中に、また田高が悪口を吐く。
「どうせ食べられる生き物なのに、アガめてるなんてバカじゃねぇの?」
それに反応してみんなの笑い声が響く。伝は黙って俯くしかできなかった。そんなこと、わかってるよ。心の中だけで悔しい想いを吐き出す。すると、ぐいっと肩を引かれ、目の前に何かを突きつけられる。
「食べろよ。お前のために残しといたんだぞ」
伝の顔の前をエビフライがぶらつく。伝は激しく首を横に振ると、田高はみんなに向かって声を張り上げた。
「海老沢の共食い見たい人~?」
は~いとみんな手を上げ笑っている。異様な空気に怯えていると、後ろからクラスメイトたちに羽交い締めにされた。前から田高がエビフライを掲げて詰め寄ってくる。逃げ場を失って伝は口を固く結んだ。それでも口を抉じ開けようと、田高は伝の頬を思いっきり殴った。倒れて床に離された隙をついて、伝は急いでランドセルをひったくって教室から飛び出した。帰り道、涙が止まらなかった。
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