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兵士達は、早速人手の足りない所へ振り分けられ、懸命に働く。
若い力を貰って、砂糖作りも、海苔作りも、果物の栽培、収穫も
うんとスムーズに、動くようになった。
それを見た蕗は、米の二毛作を、長に提案した。
年中暖かなダーナンは、二毛作に向いていた。
「そんなに沢山、米を作って、どうなさるのですか?」と、長が聞く。
「緑の国で栽培している麦は、病気や災害で不作になる時が有るらしいの。
その時は、お米を粉にして、小麦粉の代わりに
三国の人の主食であるパンを作るつもりよ」
「ええっ、米粉で、パンが作れるのですか?」長は、驚きの声を上げた。
「ええ、美味しいのよ、私、大好きだったわ」
「それでは、ダーナンでも、パンを作れると言う事ですね」「ええ」
三国から、移住して来た人や、助っ人として来てくれている人は
やっぱり、パンが恋しいらしく、船で運ばれてくるパンは
あっという間に、品切れになる、ダーナンの人の中でも
パンの美味しさに、はまっている人も多いと言う。
それならと、パン作りのノウハウを書いて貰って、送って貰う事にしたのだが
説明だけでは、微妙な火加減や、粉と水の調整は分かるまいと
パン職人が、小麦粉と共にやって来た。
そのパン職人は、窯造りから始め、長の娘と息子達の嫁と言う
比較的、時間に猶予の有る、女ばかりを集め、パン職人の見習いにした。
初めは、持って来た小麦粉で、何時ものパンを焼いて、窯の調子を見る。
出来上がった、焼き立てのパンに「美味しいわ~」と、女達も歓声を上げた。
「よし、窯の調子はこれで良い、だが、私も、米でパンを作るのは、初めてだ
うまく行くと良いが」パン職人はそう言うと、水車をフル活用し
米の粉を沢山作り、試行錯誤を繰り返し、見事に、米粉パンを焼きあげた。
出来上がった試供品を見て、蕗は「完璧」と、太鼓判を押し
「とっても美味しいわ」と、本当に美味しそうに食べた。
「やった~っ」パン職人と、見習いの女達は、大喜びをし
翌日からは、大量に、パンを焼く。
パンを焼く、美味しそうな匂いにつられて、子供達が集まり
焼き立てのパンが、作られていると言う話を聞いて、大人達も集まって来る
パンは、作っても作っても、直ぐ品切れになった。
パン屋の手が足りないらしい、そう聞いて、若い兵士が、手伝いにやって来た
パン職人は、窯をもう一つと、水車小屋をもう一つ作り、パン作りに追われた
米粉のパンは、珍しい、美味しい、これを我が国の人にも、食べさせたい。
そんな要望も有り、パンは、三国にも提供されたが
「これは、美味しい」と、米粉パンは大人気になり
「是非、うちでも作りたい」と、多くのパン屋が、作り方を知りたがった。
と、言う事で、米は麦の不作を待たず、三国へ輸出される事になった。
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