発展

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ダーナンから来ていた留学生は、その米や果物の対価で 赤の国から、鉄製の車輪を4個と、緑の国から馬5頭を買って、帰って来た。 それで、二頭立ての馬車と、荷車を作り、人や物が簡単に運べるようになった また、残りの一頭は、緊急な知らせを伝える為と ダーナンの人が、馬に乗る練習用に使われた。 四つの国は、お互いの産物や技術を交換し合い、良い関係が築かれ 平和な、日々が続いた。 この調子なら、少し位、留守にしても良いだろうと、蕗は、ガノンに カルルに乗って、一度ラグアの国に行って見たいと相談した。 「ラグアに?」驚くガノンは「止めた方が良いです、いかにカルルでも 大砲で打たれては、無事ではすみません」と、反対した。 「大砲は、幾つあるの?」「東と西と南の要塞に、一台ずつあります」 「それ位なら、カルルは避けてくれると思うわ」 「仮に、大砲は避けたとしても、地上に降りれば バイロンの配下が、襲って来ます」「それも、カルルが尻尾で 吹き飛ばしてくれると思うわ」蕗がそう言うと ガノンは、真剣に「蕗様、蕗様は、この四つの国には、無くてはならないお方 蕗様に代わる人は居ないのですよ、どうか、お考え直しを」と、強く言った。 ガノンの言う事は、最もだったが、蕗は、ジュレームに相談した。 今は、四つの国に馴染んで、すっかり、その国の人らしく暮らしているが バイロンの国から来た、乗組員たちは、心の底では ラグアに残して来た、家族の事が、気になっているに違いない。 その家族に、無事で暮らしていると言う報告と、家族の消息を ガノン達にも、知らせてやりたいのだと、蕗は言った。 一緒に聞いていたシゼルは、ガノンと同じく 「蕗様は、掛け替えの無いお方、蕗様を行かせる訳には行きません。 どうしてもと言うなら、船を、もう一艘造って ガノン達を帰らせ、様子を見させた方が良い」と、言ったが ジュレームは「蕗には、蕗の考えが有るのだろう、好きにするが良い」と 許してくれたが「決して、無茶な事はしないと、誓ってくれ」と、言った。 「有難う御座います、決して無茶な事は致しません。 必ず、無事に戻って参ります」蕗は、そう誓って、お城から帰った。 シゼルは「ジュレーム様、無茶はするなと、おっしゃいましたが どの位遠いのかも、分からない国に、出掛けさせること自体が無茶ですよ」 と、苦笑しながら言った。 「そうだな、だが、蕗ならやってくれそうな気がするんだ」 今迄、出来る筈は無いと思っていた、数々の難問を、見事に解決して来た 蕗ならば、今回の事も、上手くやってくれるのではないか ジュレームは、そう思っていた。 それも有ったが、何より、蕗が望む事だ、叶えてやりたかった。
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