貴族になった蕗

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「え?雇った?」よく分からないという顔の蕗に、カラジが言った。 「蕗様、私の一番最初の仕事として、この屋敷の使用人を集めたのですが やはり、経験豊富な人達が良いと思いまして」その言葉に続いて 「私は、三年前まで、このお屋敷で料理番として働いていたデルフと申します これからは、蕗様に喜んで頂ける様な、料理を作らせて頂きます」 と、ちょっと太めの、40代くらいだと思える男が、言った。 そして、ロナー、トーマ、リニックと言う、三人の助手を紹介した。 デルフは、三人に持たせていた、箱の中を見せ 「蕗様、何かお嫌いなものは?」と、聞く。 中に入っていたのは、肉や魚、野菜等の食材で、蕗の目にも この食材は、最高級だと思えた。 「この中には、無いようです」蕗は、ごくりと唾を飲み込んで言った。 カラジが「蕗様と、私とチャドは、朝、パンを食べたきりで お腹が空いています、早速、何か作って下さい」と、言った。 「承知いたしました」デルフは、三人の助手に、食材を厨房へ運ばせ 「蕗様、何か、ご希望は?」と聞く。 「こちらの料理はよく分かりません、お任せしますが、魚が良いかと」 この電気も無い世界だ、冷蔵庫など有る筈も無い。 魚は、早く食べた方が良いと、判断したのだ。 「分かりました」デルフは、一礼すると、厨房へ向かった。 外へ出ていたチャドが、入って来て「レイモンドさん達が、来たよ」と言う 大型の馬車、二台から、わらわらと、八人の男女が降りて来た。 その先頭に居た、50代くらいと見える、口ひげを生やした 姿勢の良い男性が、蕗の前に来て、恭しく一礼すると 「蕗様、私は、三年前まで、このお屋敷で、侍従長として働いていた レイモンドと申します、また、このお屋敷で働かせて頂けることになり 喜びに耐えません、蕗様の為に、誠心誠意、お勤めしたいと思います。 どうか、宜しくお願い申し上げます」そう言って、また深々とお辞儀をし 「取りあえず、もっとも私に近い三人を、連れて来ました」と、言うと 「シェルと申します」「エブルで御座います」「ウェルで御座います」 三人の、若い男性は、自分の名前を告げた。 続いて、レイモンドと言った人と同じくらいの歳の、小母さんが 「私は、侍女長として、働かせて頂いておりましたマーラで御座います 蕗様の、お身の回りの、お世話をさせて頂きます。 どんな事でも、お言いつけ下さいませ、どうか、宜しくお願い致します」 そう言って、侍女だというキャラ、サイラ、イスラと言う、三人を紹介した 「私、ここへ来たばかりで、何も知りません、貴方達が頼りです。 私の方こそ、よろしくお願いします」蕗は、そう言って、頭を下げた。 「ふ、蕗様、一級貴族の貴女様が、召使いに頭を下げては、なりません」 レイモンドが、慌てて、蕗にそう言った。 「え?そうなの?じゃ、次からは気を付けます」蕗がそう言うと ほっとした顔で、レイモンドは「みんな、直ぐに商人達も来るだろう 準備を整えておけ」と、命じた。 「はいっ」勝手を知っている皆は、それぞれが、働く場所へ散った。 そこへまた、馬車が来て、二人の30代と見える男性がやって来た。 「蕗様、薬師のラフルで御座います」「同じく、マディーと、申します」 そう言って頭を下げた二人に「よく来てくれました、王様に頼まれたけど 私、薬の事は、何も分からないの、助けて下さいね」と、蕗は言った。 二人は、蕗が、助けてくれと言った事に、吃驚した後 「蕗様、何もご心配は有りません、蕗様ほどの力が有れば 薬は直ぐ作れます」「そうですとも、お気を楽に持って下さい」と、力付けた 二人は、自分達の持ち場である、薬剤室へ行き、薬を作る準備を始めた。 蕗は、カラジに「こんなに沢山雇って、お金の方は、大丈夫なの?」と 心配した「蕗様、その為に、王様から支度金が出ているんですよ。 まだ、15人しか雇っていません、他の貴族様なら、この3倍以上の 召使いが居ります、うちも、これでは足りないでしょうが、取りあえず 最低限の、人は集めました」と、涼しい顔で言う。 そこへ「蕗様、お食事が出来ました」と、デルフが呼びに来た。 案内された部屋には、真っ白な布で覆われた、大きくて長いテーブルが有り 王様の椅子程では無いが、豪華な椅子が有って、そこが蕗の座る場所だった。 カラジとチャドも来て、同じテーブルに座ったが、蕗とは、遠い距離だった。 「何で、こんなに遠いの?」蕗が聞くと 「当然でございます、本来なら、召使いと、同じテーブルに着くなど 有るまじき事で御座いますよ、今日は、特別です」と、レイモンドが言う。 「そんな決まりかも知れないけど、私、一人で、ご飯を食べるの嫌だわ。 折角、皆が居るのに、これからも、一緒に食べたいわ」と、蕗は言う。 「な、、」レイモンドは、後の言葉が続かなかったが 「良いでは有りませんか」そう言ったのは、マーラだった。
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