貴族になった蕗

10/12

58人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
自分の部屋に下がった蕗に、三人の侍女が、服を脱がせ 飾りが何も無い、白い綿のワンピースを着せた。 どうやら、部屋着か寝巻の類らしい。 「今日は、仮のベットですが、良く、お休みになれます様に」 マーラがそう言い、侍女達は、脱がせた服や、そこらを片付けると 「お休みなさいませ」と、部屋を出て行った。 仮のベットとはいえ、ダブルサイズくらいの大きなベットに 真っ白な綿のシーツが掛けられ、クッションが、沢山置かれている。 「あ~~、疲れた」身体は、さほどでも無いが、初めての事ばかりで 気疲れの方が大きい。 蕗は、ドサッとベットに倒れ込んだ。 もう、死のうと思っていたのに、思いも掛けない事が起こって この世界で、生きて行く事になった、だが、身体は若くなった。 折角、若い身体を貰ったんだ、出来る限り、この世界で頑張ろう、と思う。 そして、姪の事を思う、居なくなった私を、探しているだろうな~。 「ご免ね」そう謝って目を瞑ると、あっという間に、眠りについた。 翌朝、蕗の若い身体の目覚めは、爽やかだった。 起き上がった蕗は「お天気は、どうかな?」と、カーテンを開けようとしたが 天井から下がっている、長くて幅が有って、重いカーテンは びくともしなかった、仕方なく、カーテンの隙間から、外を見る。 青い空は晴れ渡り、眼下のリフの花畑は、青い波の様にうねっていた。 「少し、風が有る様ね」蕗がそう呟いた時、コンコンとノックの音がした。 「はい」「蕗様、お目覚めで御座いますか?」と マーラが、入って来た「おはよう、マーラ」 「おはようございます、よくお休みになられましたか?」 「ええ、ぐっすり」「それは、よう御座いました」マーラは、にこにこし 後から入って来た侍女三人が「お召替えを」と、蕗を、鏡の前に連れて行き 寝巻を脱がせると、ブルーの服を着せた。 服ぐらい、自分で着たい所だったが 貴族だからと言われれば、それに従うしかない。 早く、慣れなくっちゃ、蕗はそう思った。 朝食も、皆と一緒に食べ「予定の変更は、何も無いですね」 レイモンドがそう言い、皆は、頷く。 そこへ「サージが、出来上がった分の、靴を持って参りました」 と、エブルが、三足の靴を持って来て、報告した。 「一足も無いと言ったので、徹夜で作ったんだろう」レイモンドはそう言い サージに、代金を支払う為に出て行った。 マーラは、箱の中から、青色の布靴を取り出し、早速、蕗に履かせる。 「いかがですか?」「ぴったりで、履き心地は満点よ」 蕗がそう言うと「履き心地は、満点だそうです」と、部屋の外に出た ウェルが、そう叫んだ、その声は、代金を貰っていたサージに届き サージは「良うございました」と、にっこり笑った。 いったん部屋に戻った蕗は、また「お召替えを」と 花畑へ出掛ける為の、服を着せられる。 まるで、アラビアンナイトの物語に出て来る、女の子の様な ふわふわで、裾を、紐で縛ったズボンを穿かされる。 長いリボンが付いた、大きな、麦わらで編んだ帽子も被せられ 花畑に行くからと、布靴から、茶色のブーツに履き替えさせられる。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加