貴族になった蕗

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ロブ達に見送られ、またトルヤの押す荷車で、屋敷に戻った蕗は そのまま、薬剤室に向かった。 薬剤室では、ラフルとマディーが、大きな石臼の、長い棒を片方ずつ持ち 石臼の周りを、歩きながら花を擂り潰していたが 「蕗様、これで、全て擂り終わりました」と、額の汗を拭きながら言った。 「ご苦労様、後は、これを絞るのね」「はい」二人は、擂り潰した花を 大きな布袋に入れ、桶に渡している板の上に置くと 袋の口を縛っている紐のわっかに、長い棒を差し込み、また二人で その両端を持って、ぐるぐると、桶の周りを回った。 桶の中に、絞られた花の汁が溜まり、桶の底に取り付けられている 筒の先から、受けている瓶に、薄い水色の液体が、溜まって行く。 二人は、棒に、全体重を掛け、最後の一滴までと言う感じで、絞り切った。 あの、大きな袋三つの花を絞ったのに、取れたのは、たった一瓶で 500ミリのペットボトル一本分、有るか無いかと言う量だった。 「次は、どうするの?」「はい、これに、蕗様の魔法を掛けて下さい」 「魔法?」「はい」当然だという顔で、二人は、蕗を見る。 「どうすれば良いのかしら?」蕗は、困って助けを求める様に聞く。 「回復剤に、なる様にと、願って下されば」願うだけで、薬になると言うのか だが、やるしかない、蕗は、その瓶に向かった。 様々な怪我や、病気で、苦しんでいる人の顔を思い浮かべる。 この人々を、治してやりたい、蕗は、強くそう願いながら、瓶に向かって 自分の両手を広げた、瓶の中の、薄い水色だった液体は 見る見る、青い海のような色に変化した。 「な、なんと!!」「凄いっ!!」二人の、驚愕の声に、蕗は、手を降ろした 「どうしたの?」「こんな、濃い回復薬は、初めて見ました」 「これなら、三倍、いえ四倍にでも、薄めて使えます」 二人は、目をキラキラさせて、まだ興奮していた。 どうやら、上手く行ったようだと、蕗は、ほっとする。 「早速、薄めて瓶に詰めましょう」二人は、疲れを忘れたかの様に 嬉々として、傍の瓶の水らしき物で、その青い液を薄め 消毒済みの小瓶に詰めて行く、蕗も、その瓶に蓋をする仕事を引き受けた。 三倍に薄められた物と、四倍に薄められた物が出来上がった。 ラフルと、マディーは、青い液が無くなった瓶に、水を入れて振ると 小さなグラス二つに注ぎ、ぐっと飲み干した。 「蕗様、効果は抜群です」「久しぶりに、朝から働いた疲れが 一気に取れました」二人は、回復薬の、効果を試した様だった。 「蕗様、直ぐに、薬を待っている人の所へ行きましょう」と、ラフルが言う 「まず、戦で傷ついた、兵士達の所に行くのが、良いと思いますが」 マディーの言葉に「そうね、それが良いわ、私、支度して来ます」 蕗は、薬剤室を出た、出た所にマーラが待っていた。 「蕗様、お薬は?」「出来たわ、直ぐに兵士達が居る、病院へ行くわよ」 「かしこまりました」マーラは、蕗を部屋に連れて行くと 侍女三人に手伝わせて、着替えをさせた。 ブルーのドレスに白の上掛け、腰まで有る長いリボンが付いた、白の帽子 靴は、白の革靴、イヤリングも、ネックレスも、サファイアのブルー。 蕗は、白とブルーで統一された服装で、待っていた大型の場所に乗る。 御者台には、カラジが座り、服を着替えた、ラフルとマディーも 回復薬と一緒に、馬車に乗る。
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