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手首を切るとか、首を括るとかでは、この家を汚す事になる。
それに、自殺者が出た家は、気持ち悪いだろうから
この家を売って、違う住居を求める事になるかも知れない。
迷惑を掛けた上に、余計なお金まで使わせる。
かと言って、外でそんな事をして、誰かに見つかり、救急車でも呼ばれて
命を取り留めたら、、、最悪だ、この方法は、完全では無い。
そうだ、このマンションの、屋上から飛び降りたら、完全に死ねる。
しかし、屋上への扉は鍵が掛かっていた。
ならば、非常階段の、一番上から飛び降り、、、駄目だ
階段の下は駐車場になっている、車が無い時でも、飛び降りた後で
誰かがそこを通ったら、巻き添えにしてしまう、これは、非常に不味い。
もし、うまく行っても、腰痛持ち位で、死を選ぶだろうか
この人は、姪夫婦に虐められて、自殺を図ったんだろうと、要らぬ噂が
立つかも知れない、それでは、お世話になった、姪夫婦に
大きな迷惑が掛かる。
何とか、自殺しても、誰にも迷惑が掛からない様に出来ないものか。
そう思っている蕗の目が、ある雑誌の特集記事を見つけた。
00樹海と言う所で、迷い込んだら、二度と出て来れないと書かれている。
そうだ、ここが良い、ここなら、誰にも見つからないから
死んだ後の始末も、しなくて済む、私が、ここに来たと言う事さえ
分からなければ、私が、自殺したなんて、誰にも分からない。
姪夫婦にも、迷惑を掛けなくて済む、これこそ完璧な方法だ。
その記事を、じっくり読んで、00樹海の有る駅の名前や
樹海迄の距離、移動方法など、詳しく頭に叩き込んだ。
自殺と見せない為に、部屋も片付けず、そのままで、ありったけのお金と
病院で貰った、痛み止めの薬と、樹海は、暗いだろうからと
小型の懐中電灯だけを鞄に入れる。
準備はそれだけだ「いざ出発!!」
蕗は、何時もの鞄と杖を持って、バスに乗り、駅へと向かった。
そこから、樹海の有る駅まで、随分時間が掛かったが、その駅からは
タクシーに乗って、樹海の傍まで行く。
「あ、ここで良いです」蕗は、鰻屋の前で、タクシーを降りた。
もう夕方だが、樹海に入って行くには、まだ人目に掛かりそうだった。
時間つぶしも有り「最後のご飯だ、大好きな鰻を食べよう」そう思った。
蕗は、最高級の鰻重を頼み、その美味しさを堪能し、ゆっくりとお茶を飲む。
店を出ると、もう、陽が陰り、人通りも無くなっていた。
蕗は、自販機で、お茶のボトルを買って鞄に入れ、杖を突いて歩きながら
樹海に一番近い所に建っていた、小屋の横から、すっと樹海に入った。
早く、奥まで行かないと、誰かに見つかったら、朝からの苦労が水の泡だ。
痛む足と、腰を励まし、杖を突いて、奥へ奥へと進む。
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