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「回復薬を、傷に掛けると言う事は、今までに無かった事。
本当に驚きました」と、兵士長と言う男が言った。
それまでは、ただ回復薬を飲ませ続けて
自然に治癒するまで、待っていたと言う。
「蕗様~」向こうで、ラフルが呼んでいる「どうしたの?」と、傍に行くと
「闇の魔導士が放った、魔法を目に受けて、目が開かなくなっています」
と、一人の兵士を見せる。
それを見た蕗は「三倍液を」と、言った。
ラフルが、回復薬を渡すと、兵士の目に、それを掛け
少し瞼が開く様になった所で、目の中にも、三倍液を流し込んだ。
目からは黒い涙が次々と出て行き、やがて、綺麗な青い涙になった。
「あっ、見える様になりました」その兵士が、嬉しそうな声を上げる。
また、わぁ~っという声が上がる、その声の中で「蕗様~」
マディーが、また次の兵士の傍で呼ぶ。
「闇の魔法の、闇を吸い込んで、声が出なくなっています」
と、一人の兵士を見せる。
その兵士の、口を覗いた蕗は、回復薬で、うがいをさせた。
吐き出された回復薬は、黒く染まっていた。
蕗は、新しい回復薬を、口に含ませたまま、喉に手を当て
闇の魔法で、固められて動かない声帯が、動く様にと、強く願った。
「ゴホッ」兵士が咳き込み、口の中の回復薬を吐き出した。
蕗は、また口の中を覗く、黒くなっていた声帯は、元に戻っていた。
「声を出して」蕗にそう言われて「あ、あ」と言った兵士は
「声が出る!!、声が出る様になった!!」と、躍り上がって喜んだ。
「良かったな~これで、彼女に、自分の口から、プロポーズ出来るぞ」
友達らしい兵士が、そう言って、肩を叩く。
また、皆が、わぁ~っと、歓声を上げた。
大騒ぎしている兵士達から離れた所に、一人ぽつんと
ベットに横たわっている兵士が居た。
「あら、あの子は?」「あの人は、足の骨が折れているんです」
「残念ですが、骨折だけは、回復薬も効きません」
ラフルとマディーは、悔しそうに言った。
蕗は、その兵士の傍に行った「蕗様、、」兵士は、力の無い声をあげた。
その兵士の右足は、板が添えられ、しっかりと、固定されていた。
このまま、長い時間を掛けて、自然に骨がくっつくまで、待つのだと言う。
蕗は、骨折していると言う、脛の上に手をかざした。
すると、まるでレントゲン写真を見る様に、骨折した個所が見える。
骨折した、骨と骨の間は、少し開けて固定されていた。
長年の、知恵で、それがベストだと知っているのだろう。
蕗は、その隙間が埋まる様に、骨が伸びるイメージを強く持ち
「くっつけ、くっつけ」と、願った。
折れた所から、新しい骨が出て来て、少しずつ伸びて行く。
「もっと、もっと」蕗は、更に強く願う。
どのくらい時間が経ったのか、蕗の額に汗の玉が浮かぶ頃、骨はくっついた。
「やったわ!!立って見て」蕗の言葉に、ラフルとマディーが
固定していた板を外した、兵士は、恐る恐るベットから、足を降ろした。
「立てる!!痛くない!!」兵士は、そう叫ぶと、ベットに座り
蕗に縋りついて、おいおい泣き始めた。
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