赤の国と青の国

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赤の国と青の国

その日、マーラたち侍女は、蕗に念入りにお化粧をし 一番良い淡い緑色の服を着せ、アクセサリーは、真珠のネックレスに ルビーのイヤリングと言う、ちょっとまとまりが無いと思える格好をさせた カラジが御者になり、二人の護衛付きと言う、何時もの馬車で王宮に行く。 カラジに付き添われて「癒しの魔導士、蕗様~~」と言う、例の言葉の中 案内人の後に付いて歩いていると、前から来た 立派な口髭と顎髭を蓄えた、堂々とした人が近づいて来て 「蕗様、この度は、私の部下たちを、お助け下さりまして 誠に有難う御座います」と、胸に手を当て、深々とお辞儀をした。 「し、将軍閣下」カラジが、驚きの声を上げる。 この人が、この国の軍を率いる、将軍様なのね、そう思った蕗は 「お礼には及びません、それが私の仕事ですから」そう言うと 「私の為に、ディグとビルドを、よこして下さって、有難う御座います」 と、お礼を言った、将軍ハルドは、笑みを浮かべ 「あの二人は、役に立っておりますかな」と聞く。 「はい、とっても」「それは良かった、では」ハルドはそう言って 一礼すると、外へ向かった。 謁見の間に、案内されるとばかり思っていたが、その日案内されたのは 国賓の間だった、中へ入ると、すでに国王ジュレームが待っていて 「蕗殿は、ここへ」と、自分の隣の席を指差した。 蕗が、座ろうとしていると、お付きの者を従えた、二人が入って来たが どちらも、一目で国王だと分かる、大きなオーラを持った二人だった。 二人は、すぐさま、蕗の元へ歩み寄り「初めまして、青の国王ルシアンです」 日焼けした顔に、真っ白な歯を見せて、にこやかに笑う青の国王に 「初めまして、赤の国王、マンセルで御座います」赤の国王は 意志が強そうな、きりりとした顔で、そう言うと 「我が国のシンボル、ルビーの耳飾り、素敵です」と 顔に似合わない、言葉を言い、蕗の手を握った。 青の国王ルシアンも、慌てて「蕗様、我が国で採れる、その真珠 良くお似合いです」と、手を握って褒めた。 蕗は、マーラが、なぜこんなアクセサリーを付けたのか、やっと分かった。 ジュレームは、笑いながら「もう、お二人の紹介は、しなくて済みましたね」 と、言い「では、会議を始めましょう」と言った。 それぞれの、お付きの者達も、部屋から出て、室内には、四人だけになった。 会議の内容は、やはり、蕗が作る回復薬を 何時頃、どの位、出荷してくれるかと言う物だった。 蕗は、緑の国内は、ほぼ薬が行き渡ったので 両国にも、毎日、三箱ずつなら届けられると答えた。 二人の国王は驚き「そんなに、大量に生産できるのですか」と聞く。 「はい、みんなで力を合わせて、毎日頑張っていますから」と、蕗は答える 「それは、嬉しい!!これで我が国の病人や怪我人を、助けられます」 二人の国王は喜んだ、赤の国王は、ちょっと遠慮気味に 「我が国は、職人の国、火傷や酷い怪我をしている者が、多いのですが、、」 と、言う「それでしたら、私が、出向いて治してあげたいのですが 構わないでしょうか?」蕗は、ジュレームに聞く。 「構わぬ、蕗の好きにするが良い」蕗は、にっこり笑うと 「お許しが出ました、まず、赤の国へ、参りましょう」と言ったので マンセルは、相好を崩して大喜びをした後、元の顔に戻って 「蕗様、お待ち致しております」と、恭しく、頭を下げた。 ルシアンも「わが国にも、海での怪我人が居ます、赤の国が終わり次第 来て頂けると、嬉しいのですが」と、言った。 「勿論、伺わせて頂きます、久しぶりに、海を見られるのも楽しみです」 蕗がそう言ったので、ルシアンは「蕗様は、海がお好きなのだな」と にこにこ顔になった。
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