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会議を終えた蕗は、屋敷に帰ると、昼食を取り、そのまま薬剤室へ行き
「青の国と、赤の国に、毎日三箱ずつ、届ける事になったわ
皆さん、頑張って下さいね」と、言うと、自分も薬作りに励む。
その蕗に「蕗様、蜂屋のピルトが、北玄関に来ております」と
マーラが言いに来た「はち?」「花の蜜を集める、蜂で御座います」
ああ、養蜂家だな、これだけ花が有れば、蜂も蜜集めは楽だろう
蕗はそう思いながら、北玄関へ行った。
麦わら帽子を手に持った男と、両手に、大きな蜂蜜の入った瓶を持っている
若い男が居た、二人は蕗を見ると、深く頭を下げ
「蕗様のお花畑で、蜂屋をさせて頂いております、ピルトと申します。
こちらは、息子のリクジュで御座います」と言うと、二つの瓶を差し出し
「取れたての、蜂蜜です、どうかお納め下さい」と、言った。
「まぁ嬉しい、私、蜂蜜が大好きなの、早速、今日のお茶に使わせて貰います
蕗がそう言うと、ピルトもリクジュも、まるで向日葵の様な笑顔になり
ぺこりと頭を下げると、また、花畑の方へ行った。
二つの瓶を抱えた、マーラの後に付いて行きながら
「その蜂蜜、直ぐに食べてみたいわ」と、蕗は言った。
「まぁ、蕗様、お行儀の悪い」と、マーラは言う。
ずっと貧乏暮らしだった蕗にとって、蜂蜜の値段は高く、そうそう
手に入れられるものでは無い、憧れの食品だった。
「リフの花の蜜でしょ、何か体に良い事が有るのかも、知れないじゃない」
「確かに、リフの花の蜜は、他の花の蜜より高値で取引されています。
疲労回復の度合いが、格段に違いますから」
「え~~っやっぱり?どんな味か、スプーン一杯で良いの」
「蕗様、、、」マーラは、子供みたいに強請る蕗に、おかしさを堪え
厨房に行くと、デルフに「蕗様に、蜂蜜の味見をさせて」と、言い付けた。
デフルは、小皿に蜂蜜を入れ、スプーンを添えて蕗の所へ持って来た。
「美味しい!!凄く濃い味なのに、後味は、さっぱりね」
蕗は、直ぐに食べてしまい、デフルが淹れてくれた、紅茶を飲みながら
ふ~っと、息を吐くと「確かに、疲労は取れるわね~すっきりしたわ」
と、言った、マーラとデフルは、顔を見合わせた。
蕗も、連日の働きで、やはり疲れていたのだと、知ったのだ。
その日の夕食は、蕗の疲れが取れる様にと
デフルが工夫を凝らした物が出され、蕗はいつもの様に
「美味しい!!」を、連発した。
マーラたちの手で、夜も、ぐっすり眠れる様にと
温めの湯に、ゆっくり入れ、寝室には、心を静めるアロマが焚かれた。
そのお陰で、蕗は、朝までぐっすりと眠り、元気に起床した。
朝食を取ると、直ぐに馬車に薬を積ませ、赤の国へと出かける。
「蕗様、あまりご無理は、なさいません様に」
見送る、レイモンドと、マーラがそう言う。
「大丈夫、美味しい物を食べて、ぐっすり寝たから
体力も気力も、満タンよ、何でも、どんと来いだわ」
蕗はそう言うと、何時ものメンバーで、赤の国への橋を渡った。
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