国王の秘密

2/9

58人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
シゼルが馬を飛ばし、息子の悲報に、王宮へ駆けつけていた 前国王の元に行き、事情を手早く話し こちらも、隠密裏に仕立てた馬車に乗って、王妃の実家に行った。 息子と孫を、一挙に失った前国王夫妻は、悲嘆にくれたが 「この事態を、早急に良き方向へ進めねばならぬ 誰か、良い方法は思いつかぬか」と、前国王は言った。 王と、その跡を継ぐ王子迄、亡くなったと知れば、国民は動揺し 兵士達も、浮足立つ、そんな所を、闇の魔導士に襲われれば この国は、ひとたまりも無く、その手に落ちる。 何としても、それだけは防ぎたかった。 「私が、元気ならば、もう一度国王の座に戻っても良いのだが、、、」 前国王には、持病が有り、何日も寝込む事が有った、 だからこそ、早めに国王の座を、息子に譲ったのだ。 皆が困っていると「私が、国王になります」と、メリナが言った。 「何だって?」「駄目よ、女では、国王になれないのよ」母が、驚いて言う 「だから、亡くなったのは、私と言う事にして、私が、お兄様になるの」 「そ、そんな事、いくら何でも」祖母二人は、顔を見合わせ、首を振った。 「だって、私、お兄様より、早く走れるし、馬にだって、上手に乗れるわ」 確かに、ジュレームは大人しく、剣の稽古や、乗馬の訓練より 勉強をする方が好きな子だった。 反対に、メリナは活発で、剣の稽古や乗馬の訓練が、大好きだった。 「姫様に、こんな事をさせる訳にはと」と、家臣達が困惑していた位だ。 「う~~む」皆が腕組みをして、考え込んでいると、鋏を持って来たメリナは いきなり、長いふさふさの髪に、ジャキンと、鋏を入れた。 「きゃぁ、何をするの!!」「ほら、これで私、お兄様になれたでしょ」 双子なので、顔も姿もそっくり、違うのは髪の長さだけ それを切ってしまえば、メリナはジュレームそのものだった。 結局、他に良い案も無く、メリナは、ジュレームとして生きる事になった。 「メリナ、これからは、茨の道を歩く事になるのよ、それでも良いの?」 王妃は、メリナを抱きしめて、涙を零しながら、そう言った。 「悲しまないで、お母様、あの時、お兄様が、助けに来てくれなかったら 私は、もうここには居なかった、死んだつもりで、お兄様になり切るわ」 「メリナ、、、」「お兄様は良く言ってたわ 父上の様な立派な国王になって、国民の為に、力を尽くすって。 私、お兄様になって、お兄様のその夢を、実現させてあげたいの」 「メリナ、、」「姫様、、」メリナの決意を聞き そこに居た全員が、涙を零した。 それから一年間、国王と、メリナの喪に服す、と言う名目で メリナや、王妃たちは、人目につかぬ王妃の実家で メリナから、ジュレームになる訓練を、日々続けた。 喪が明けた良き日に、戴冠式を済ませた、ジュレーム事メリナは その可愛くも、凛々しい姿を、国民の前に現した。 「王様~」「ジュレーム様~」国民は、悲しみを忘れ 新しい国王誕生に、大きな安堵と共に声援を送った。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加