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こうして、兄ジュレームとなり、国王としての責務に励んでいたが
メリナの身体は、年々、女らしくなって行く。
それを隠す為に、ぎりぎりと布を胸に巻きつけ、着替えや入浴の世話は
侍女達にはさせず、王妃と祖母が行い、秘密を守っていた。
だが、最も大きな問題が待っていた、国王の結婚である。
王としての一番の仕事は、世継ぎを残す事、だが、ジュレームは女だ。
この問題を解決すべく、シゼルの父、近衛隊隊長のウィルバーは
国中の若い女性達の情報を、集めていた。
その中で、離婚結婚を繰り返す、自堕落な母を見て育ち、女として生きる事に
嫌気がさし、修道院へ入ろうと思っている、ミリアと言う娘を知る。
ウィルバーは、ミリアに会って、国王の秘密を話し
「お前が、王妃になると言う事は、この国を守る為である。
王妃と言う立場にはなるが、国王も女性だ。
お前が嫌がる、男女の関係にはならぬ。
女の身で、国を支えているジュレーム様の、力になっては呉れぬか」と
ミリアの、優しい心に訴えた。
ミリアは、三日考えた末「これが、私に与えられた、宿命かも知れません」と
王妃になる事を承諾した。
ミリアは、ウィルバーの養女になり、一年間、宮廷のしきたり等を学んだ後
ジュレームと、結婚した。
「ミリア、済まぬ」ジュレームは、深くミリアに感謝した。
「ミリア、有難う」「ミリア様、助かりました」国王の秘密を知る者達は
全員、ミリアに感謝し、国民も「王妃様~」「ミリア様~」と、喜び
行く先々で、手を振ってくれる。
ジュレームの横に居るだけでなく、王妃としての仕事も有ったが
ミリアにとって、それは楽しい仕事だった。
こんな自分が、国の為に力になっている、その満足感は、大きかった。
なにより、嬉しかったのは、劣悪な家庭環境では、得られなかった
家族として大切にされている事だった。
ジュレームも、前王妃も、侍女達も、周りに居る皆は、全員
ミレアを第一に考え、大事にしてくれた。
だが、まだ問題は有った、国王も王妃も、女性なのだ。
後継ぎは、どうする、ジュレームの血を引く、子供でなくてはならない。
すると、ジュレームが言った「その役目は、シゼルに頼みましょう」
元々の事件から知っている、シゼルは、ジュレームより5歳歳年上で
子供の頃から、仲が良かった。
「シゼル、構わぬか?」前国王が聞く「はい、喜んで」シゼルは、即答した。
国の為でも有るが、幼いころから、メリナが好きだったからだ。
こうして、シゼルと結ばれたジュレームは、三年前、子供を授かったが
出産に漕ぎつける迄は、並大抵の事では無かった。
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