国王の秘密

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「ドラゴンは、私にも、最も興味深い生物です、まず、これをご覧下さい」 ダニエルは、隣りの部屋に、蕗を連れて行って 壁に掛けられている、大きな絵を見せた。 そこには、真っ黒な翼を広げた、恐ろしい顔のドラゴンが居た。 「これが、ドラゴン、、」蕗は息を呑む。 「顔は、トカゲ属に似ていまして、体は硬く、鎧のように頑丈で 長い尻尾で、人や物をなぎ倒します」 「これに、闇の魔導士が乗って来ると、聞きましたが」 「そうです、闇の魔導士は、ドラゴンの背中から、闇の魔法を使って 迎え撃つ兵士達を襲撃し、収穫物や馬や牛などを、さらって行くのです」 「闇の魔導士が操る、黒いドラゴンは、元々、この国に居たのですか?」 「いいえ、闇の魔導士が住んでいる、白い国より、はるか遠くに ドラゴンの住む国が有るのではないかと、私は、推察しています。 何かしらの理由で、その国から出て来た、一つがいのドラゴンが 白い国に迷い込んだ様で、雌の赤いドラゴンは、翼を傷めているのか 飛んでいる姿は、見た事が有りません、飛んでいるのは、黒い雄だけです」 「雌の赤いドラゴンも居るのですか?」「はい、雌は、比較的、我が国に近い 大きな洞窟の中で暮らしていて、日当たりの良い場所に作った巣に 卵を産みます、子供が産まれて、一年くらい経つと、雄が、その子供を連れて 一カ月ほど、どこかへ行ってしまいます、おそらく、ドラゴンの国に 連れて行くのでは無いかと、思われます」 「随分詳しく、生態を調べているのですね」蕗がそう言うと 「何しろ、何時、襲撃が有るか分かりませんから、ほら、あそこに」と ダニエルが、窓から、遠くを指差す。 高い山の、木々に囲まれた所に、小さな小屋らしき物が見えた。 「あそこで、ドラゴンの観察と、見張りをしているのです、ドラゴンの背中に 闇の魔導士が乗った時点で、国中に警戒音を鳴らす様になっています」 「なるほど」「先日、襲撃が有ったばかりですから 暫くは、無いと思われますが、、」ダニエルは、そう言いながら もとの部屋に戻り、紅茶のお代わりを淹れてくれた。 ダニエルから、美味しい紅茶を一缶貰って、蕗は、屋敷に戻った。 それから、一週間後、ダニエルから「今日、明日は、私の休日です。 良かったら、茶の木を見に来ませんか」と言う、誘いの伝言が有った。 蕗は喜んで、薬を作り終えると、ダニエルの屋敷へ向かった。 ダニエルの屋敷は、普通の民家より、やや大きい位だったが 斜面になっている、広い土地には、日本で見る、茶畑と同じ光景が有った。 「わぁ~こんなに沢山の茶畑が、壮観ですね~」蕗がそう言うと 「何しろ、三つの国に、出荷していますから」と、ダニエルは言う。 その茶畑では、十数人の男女が、お茶の葉を摘んでいた。 「まだ、お茶の葉は、摘めるんですね」「はい、ですが、これが最後です」 蕗は、傍の茶の葉を一枚摘んで、匂いを嗅ぐ。 「あ~~いい香り、懐かしいわ~」「蕗様の国でも、お茶を?」 「はい、紅茶では無く、緑茶なんですが」「緑茶?」 「そうなんです、確か、摘んだ葉っぱを釜で炒って、揉んでいた様な」 蕗にも、詳しい事は、分からなかった。 「蕗様、その緑茶に、挑戦してみては?」ダニエルはそう言って 摘んだ葉っぱを一袋、分けてくれた。 「有難う御座います、上手く行ったら、試飲して下さい」「待っています」
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