国王の秘密

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蕗は、屋敷に帰る前に、カラジに台所用品を売っている店に 連れて行って貰った。 「まず、道具を手に入れなくっちゃ」店に入った蕗は 大きな鍋を買った、テレビでちょっとだけ見た、お茶作りの職人は 確か、ゴザの上でお茶を揉んでいた様に見えたが この世界に、ゴザなど無いだろう、まな板みたいな物の上で揉むしか無いか だが、まな板らしき物は、見当たらない。 そんな物を使って、料理はしないと、カラジに言われた。 「あ、これは?」広い板が有った「それは、パン作りに使う物ですね」 「じゃ、これにするわ」後は、、熱い葉を揉む事になるから 軍手みたいな物が欲しいけどと、台所用品の店を出て 手袋を売っている店を覗いてみた、色々な手袋が有る中に 兵士達が使うと言う、綿素材で編んだ手袋と言うのを見つけ 「これで良いわ」と、買い求めた。 屋敷に戻った蕗は、まず「この手袋を洗って、早く乾かしたいんだけど」 そう言うと「お任せ下さい」マーラが、サイラと共に手を広げ 洗った手袋に、風を送って、あっという間に乾かしてくれた。 「有難う、板と鍋は、、」「もう綺麗に洗って、乾かしていますよ」 デルフが、板と鍋を見せて言う。 蕗様が、厨房に入って来るなんて、いったい、何を作るのだろう? デルフと三人の助手は、ワクワクした目で目ている。 「ちらっと見ただけなの、上手く作れるかな~」蕗は、心配しながら 鍋を弱火に掛け、茶の葉を、ふた掴み程、鍋に入れ、柄の長い木べらを 貸して貰って、葉っぱを焦がさない様に、ゆっくりと混ぜる。 葉っぱが、かなり、しんなりして来た所で、板の上に出し、手袋をはめた手で 揉もうとしたが「あち、あちち」蕗の両手は、手袋をしていても、熱くなる。 「蕗様、お手を」デルフが、風を送って蕗の手を冷ます。 「有難う」蕗は、時々熱くなった手を、冷まして貰いながら ぎゅっぎゅっと、茶の葉を揉んだ。 「う~ん、何とか、葉っぱは丸まったけど」 普通のお茶の、三倍ほどの太さの、撚りの甘い物になった。 「これじゃ、お茶とは言えないわね~」この後、どうするのだろう。 飲む時は、乾いているから「これを、乾かすのかな~」蕗がそう言うと 「では」と、デルフがロナーと一緒に風を送り 葉っぱは、カラカラに乾いた。 「これで、お茶になったのかしら」取りあえずと、その葉をカップに入れ お湯を沸かして貰い、暫く冷ました物を、カップの中に入れてみた。 丸まっていた葉が、ゆっくり解けて、お湯の色が、緑色になった。 「香りは、お茶そのものだけど」そう言いながら、飲んでみた蕗は 「薄味だけど、お茶らしき物になってる!!」と、喜んだ。 「蕗様、私も、味見を」デルフが、興味一杯の目で言う。 「どうぞ」蕗は、デルフの差し出すカップにも、お茶の葉を入れてやり 「熱いお湯を入れると、苦みが多くなるのよ」と、言った。 デルフは、お湯が冷めるのを待ち切れなくて、ちょっと高い温度のお湯を カップに入れたが「何と!!素晴らしい香りと味ですね~ この、ちょっとの苦みも、私には美味しく感じます」と、べた褒めする。 他の皆も、飲みたそうにしているので、蕗は、皆にも、飲ませた。 「何だか、気持ちが安らぎますね~」「口の中が、さっぱりします」 皆にも、好評だった。 「名人と言われる人が作ると、この葉っぱが、針のように細くなるのよ」 そう説明しながら、蕗は、久しぶりの緑茶に、心が温かくなった。 「蕗様、残りの葉も、さっきの要領で作れば良いのですね」 「ええ」「では、後は、私達に、お任せ下さい」「えっ、でも、仕事は?」 「大丈夫です、仕事の合間にやりますから」 「出来上がりましたら、上手く出来ているか、味見をお願いします」 と、言う事で、お茶作りは、蕗の手を離れた。
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