58人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
いよいよ、お腹の大きさを隠しきれなくなってから、出産後まで
どんな名目で、ジュレームを国民の目から、遠ざけるかという物だった。
「そうですね~」蕗は考えた末「先年、骨折した所の具合が悪くなった。
様子を見ていたが、一向に良くならないので、蕗の治療を受ける
と、言う事にしては、いかがでしょう」「おお、それは良い」
「蕗様の、治療と言う事であれば、二、三カ月、顔を見せなくても
国民も心配はしないでしょう」ジュレームと、シゼルは、そう言った。
蕗は、ジュレームのお腹に手をかざし「陛下、お子様は二人ですね」と、言う
「ええっ、双子?」「はい」「そうですか、私の家系には双子が多いんです
私と兄もそうでした」ジュレームは、お腹を撫でながら、そう言った。
「双子となれば、お腹の大きさも、、」シゼルがそう言う。
「目立つようになったら、足が痛むと言って、車を付けた椅子に座って
シゼル様に押して貰い、お腹が見えない様に、ケットで隠して下さい」
「それは、良い考えですね、その後、どうしても駄目だから
蕗様の治療を受けると言えば、自然な流れになります」
シゼルも、そう言い「早速、椅子に車を付けた物を、作らせます」と言った。
これで、何とか乗り切れそうだ、蕗は、宮殿から下がると
屋敷に戻り、普段着に着替えて、カラジをお供に、まだ行った事の無い
花畑の向こうの、林に出掛ける事にした。
カラジは、馬を引き出し、蕗を前に乗せ、蕗の後ろから手綱を持って
ゆっくりと馬を歩かせる。
「わぁ~馬の背中って、随分高いのね」蕗は、周りの景色を見ながら言う。
馬は、初めてなのに、なかなか上手に乗っていると、カラジが褒める。
林の入り口に、馬を繋ぎ、二人は、林の中へ入って行った。
カラジは、茸が無いかと下ばかり見て歩き、蕗は、木の実が無いかと
上ばかり見て歩く。
「わぁ~こんなに沢山、旨茸が有る」一番美味しいと言われる
旨茸を見つけたカラジは、夢中で、それを採って行く。
その間に、蕗は、自分の顔の傍に有る、細い枝が絡み合っている所に
何やら白い物を見つけ、何だろうと、傍に寄ってみた。
「卵だわ」それは、ダチョウの卵の三倍以上も有る、巨大な卵だった。
「こんな大きな卵を産む鳥が居るの?」と、見ていると
卵の中から、コツコツと言う音がして、ひびが入り、殻がポロッと剥がれた
「あ、生まれる」そう思った時、もっと大きく殻が剝がれ
中から、真っ赤な顔に、金色の目をした、トカゲみたいな生き物が
顔を出し、蕗を見て「カ、、カ、ル」と、鳴いた。
「まぁ、真っ赤ね~変わった鳥?なの?」蕗がそう言うと
よちよちと、殻から出て来た鳥?は、蕗の差し出している手に、頭を擦り付け
「カ、カル、カ、カル」と、嬉しそうに鳴いた。
「まぁ、可愛い」蕗は、その頭を撫で、羽が有るから鳥なんだろうけど
体は、鳥にしては、ごついわね~と、体も羽も、真っ赤な鳥?を抱いた。
「お母さんは?」と、辺りを見回したが、その子の親らしき鳥は居ない。
その時「蕗様、ここでしたか」と、カラジがやって来て
蕗が抱いている、真っ赤な物を見ると、顔色を変え
「ふ、蕗様、、それは、ドラゴン、、」と、ガタガタ震えながら言った。
「え?この子、ドラゴンの子供なの?」カラジは、ドラゴンが来るのではと
空を見上げて、きょろきょろ探したが、ドラゴンらしき姿は無かった。
「な、何でこんな所に、、」「ここに卵が有って、それが孵化したの」
最初のコメントを投稿しよう!