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「おかしいですね~ドラゴンは、白い国の洞窟の前に、巣を作って
そこでしか、卵は産まないのですが」
驚きが、ちょっと治まったカラジは、首を傾げる。
「この子、確かに、ドラゴンなの?」
「はい、それはもう、この姿、ドラゴン以外の何物でも有りません」
「何で、親は居ないのかしら?」「不思議ですね~」
「ここへ置いていた方が良いかな」蕗が、抱いていたドラゴンを
元に戻そうとしたが、ドラゴンは、手と足の爪でしっかり蕗につかまって
離れようとしない「何だか、懐かれちゃったみたい、離れてくれないわ」
「う~ん、こんな所に置いていたら、誰かに見つかって大騒ぎになるか
この子の鳴く声を聞いて、ドラゴンが来ても、大変ですし」
「それより、まだ一人で、餌も食べられないんじゃない?
このままじゃ、死んじゃうかも知れない、いくらドラゴンでも、可哀想だわ」
「困りましたね~」「そうだ、ダニエルさんの所へ連れて行って
相談してみましょう」「そうですね、それしか良い方法は無さそうです」
と、言う事で、胸に抱いたドラゴンの子供を、布で覆って
人目につかないようにし、馬車に乗り換えて、ダニエルの所へ行った。
「何と!!ドラゴンの子供!!」
ダニエルは、驚愕した顔で、まじまじと、その姿を見る。
「何で、あんな林の中に、卵が有ったのかしら?」蕗がそう言うと
「実は、先日、観測小屋から、新しい情報が知らされたんです」
ダニエルはそう言って、雌のドラゴンの所に、新しい雄が現れ
前の雄との戦いになり、前の雄が破れて、どこかへ行ってしまい
代わりに、新しい雄が、居ついたと言う。
その時、雌は卵を抱いていた、卵が有る間は、他の雄とは交尾しない。
それで、新しい雄は、雌の隙を狙って、卵を捨てたのだろうと言う。
「そんな酷い事を?」「野生動物の間では、良く有る事です」
「じゃ、この子は、捨てられた子供って言う事ですね」
「そう言う事になりますね」「私の胸から、離れないんですけど」
「多分、初めて見た蕗様を、親だと認識してしまったのでしょう。
これも、良く有る事です」「私を、親だと思ってるの、おチビちゃん」
蕗が、顔を覗き込んでそう言うと「カルル、カルル」と、甘えた声で鳴く。
「この子、育てちゃ駄目でしょうか?」
「さぁ、それは、、何しろドラゴンですからね~、小さい時は良いとして
大きくなって、手が付けられなくなったら、困りますよ」
「、、、でも、折角生まれて来たのに、、」
「どうしても、飼いたいなら、国王陛下の許可を、頂くしか有りませんね」
「そうですね、あ、この子には、何を食べさせたら良いかしら」
「小さく切った肉か、魚ですね、観察係の話では
親ドラゴンは、草や木の実も食べさせていた様ですが」「分かりました」
取りあえず、ダニエルの所から帰り、デルフに、肉の細切れを貰いに行く。
「蕗様、こんな物を、何になさるのですか?」「うん、ちょっとね」
蕗は、言葉を濁して、自分の部屋のクローゼットの中に隠している
ドラゴンの子供に、肉を与えた。
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