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さっきの娘が、喜び一杯の顔で、両手にタオルを持って待っていて
「さぁ、魔導士様、身体を拭きましょう」と、まず、びしょびしょの頭を拭き
タオルを巻きつけた、タオルを受け取った中年の女性も
蕗の身体を、大きめのタオルで覆い、後ろから、ブラジャーを外した。
「え?」その時になって、初めて、着ていた筈のシャツと
樹海に入ってから、歩きやすい様にと、スカートと、はき替えた
ジャージの下が、無くなっていて、ショーツ一枚の姿だと気付いた。
「ふ、服は、、」「見分けの滝で、流されたのですよ」
二人は、何でも無いと言う顔で言う、いくら年寄りでも、大勢の人前で
ショーツとブラだけの姿で、歩いたのかと恥ずかしくなったが、それより
「私の言葉が、分かるの?どうして?」と、一番気になる事を聞く。
「貴女様が、癒しの魔導士様だからです」「いやしのまどーしって、何?」
「我々の病気や怪我を治して下さる、尊い魔導士様です」
二人は、そう説明しながら、せっせと、濡れたショーツも脱がせ、体を拭き
「こんな粗末な物しか御座いませんが、これにお召替えを」と
白い、ワンピースみたいな服を着せた。
それから、椅子に座らせると、髪を乾かし始めたが、音も無く
熱も無い風だけの、ドライヤーを使っている様だった。
前髪を乾かそうと、前に回ってきた娘を見て、???蕗は、違和感を覚える
娘の手には、ドライヤーなどは無く、手から直接風が出ている、そう見えた。
「あ、あの、風が、、」「はい、私どもは、ほんの少しの風を使える
魔法を持っています」「ま、魔法?」魔法だって?どういう事、確かに
娘の手からは、まるでドライヤーを使っている様な、風が出ているが、、、
夢だ、これは夢なんだ、凄くリアルだけど
きっと私は、あの樹海で死んだんだ、あの世へ行く途中で、夢を見ているんだ
だから、こんな知らない格好をした、知らない人がいて
魔法だ、魔導士だと、漫画みたいな事を、、漫画?そうだ漫画だ。
勉強が出来なかった蕗は、難しい文字が並ぶ、小説などの本より
目で見て楽しめる、漫画を手に取る事が多かった。
その漫画には、この世ではありえない物語が
あたかも現実の様に、繰り広げられていた。
もしかしたら、ここは、その漫画の世界なのかも知れない。
その中で、私は、人々の病気や怪我を治す、魔導士と言う役目なんだ。
そんな事を思っている蕗の髪を、ブラシで梳いた娘は
「真っ直ぐで、艶やかな黒髪、魔導士様らしい、神秘な色ですね~」
と、言う『黒い髪?私は、白髪だけど』と思っている蕗の前に
大きめの鏡を持って来た、中年の女性は「出来ました」と、見せる。
「だ、誰?これ?」鏡の中には、黒髪の中に、血色の良い頬をした
可愛い娘が、驚いて目を丸くしていた。
「魔導士様です」「こ、これが、私?嘘でしょ」
「嘘では有りません、古い諸々のうわべは、見分けの滝に流されて
このお姿が、本当の魔導士様の姿なんです」「、、、、」
夢だとしても、納得できない蕗に構わず、ドアを開けた女性は
「カラジ、出来たよ」と、若い男を招き入れた。
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