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この世界でも、やはり私は、親にはなれないのか、蕗は、悲しかった。
ジュレームは、そんな蕗を見て「シゼル!!何とかしろ、蕗を泣かせるな」
と、言った「ははっ」シゼルは、ジュレームに頭を下げると
「蕗様、陛下のお言葉により、私が何とかします、それまでは
お屋敷内で、人目に触れぬよう、お育て下さい」と言った。
「ええっ、本当ですか?」蕗が、喜びの顔をジュレームに向けると
「この世界の皆を助ける、蕗の望みだ、叶えてやらねばならぬ」
ジュレームは、にっこり笑って言った。
「有難う御座います、有難う御座います」蕗は、ジュレームにお礼を言い
「シゼル様、どうか宜しくお願い致します」と、シゼルにも、頭を下げた。
その後、蕗は王宮の一番東に有る、王妃ミリアの所へ行った。
ミリアは、ジュレームと同じ位の大きさになる様、お腹に布を巻いていた。
傍には、王子のジョアンも居る「ミリア様、お変わりございませんか?」
蕗は、侍女達の手前、そう言って、ミリアの傍に行った。
「みんな、下がって」ミリアの言葉で、侍女達は、部屋から出て行った。
「陛下のご様子は?」ミリアがそう訊ねる。
「順調で御座いました、ご安心下さい」「そう、良かった」
ミリアは、ほっとした顔になった。
ジョアンが「蕗、それな~に?」と、蕗の胸を指差して言う。
カルルが、ちょっと動いたのを、目ざとく見つけた様だ。
「これは、私の子供、カルルで御座いますよ」隠せないと思った蕗は
そう言って見せた「わぁ~可愛い、私も抱っこしたい」
ジョアンは、そう言って「母上、良いでしょ」と、ミリアに言う。
ミリアは「ふ、蕗様、それは、、」と、青い顔になった。
「はい、このカルル、ジュレーム様が、飼っても良いとお許し下さいました」
「そ、そうでしたか、、それにしても、蕗様って、凄い方ですね」
そう言っていると「ねぇねぇ、蕗~抱っこ、抱っこ」と、ジョアンがせがむ。
「はい、でも、カルルは、生まれたばかりの赤ちゃんなんです。
そっと、抱っこして下さいね」
蕗はそう言うと、カルルをジョアンの腕の中に、抱かせてやった。
ジョアンは、小さな手でカルルの頭を撫で、嬉しそうな顔をして
「赤ちゃん、可愛い!!」と、頬をよせた。
いくら赤ん坊でも、ドラゴンだ、ミリアは、はらはらしていたが
カルルは、首を傾げ「カルル」と鳴くと、ジョアンの頬を、ペロッと舐めた。
「あっ、カルルがキスしてくれたよ」ジョアンは、大喜びだ。
暫く遊ばせた後、蕗は「そろそろ、カルルのご飯の時間なんです」と言って
ジョアンから、カルルを返して貰い、王宮から下がった。
「お帰りなさいませ蕗様、カルルは、どうなりました?」
レイモンドとマーラが、心配そうな顔で待っていた。
「飼っても良いって、陛下のお許しが出たわ」蕗がそう言うと
「良かったですね~」と、二人は喜び、デルフは
「蕗様、新鮮な海老が手に入りました、カルルの夕食に、どうでしょう」
と、聞く「海老?きっと喜ぶと思うわ」そう言っていると、侍女達が来て
「蕗様、カルルの寝場所を作りました、見て下さい」と言う。
行ってみると、ドーナツみたいな形に、丸い土手を作った布団が有る。
「大急ぎで、縫いました」「どうでしょう」
「これは良いね、上手く作ってある、有難う」カルルを、真ん中に
すっぽり入れると、周りが、枕になって、寝心地良さそうだった。
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