ドラゴンの卵

6/13

58人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
この世界でも、やはり私は、親にはなれないのか、蕗は、悲しかった。 ジュレームは、そんな蕗を見て「シゼル!!何とかしろ、蕗を泣かせるな」 と、言った「ははっ」シゼルは、ジュレームに頭を下げると 「蕗様、陛下のお言葉により、私が何とかします、それまでは お屋敷内で、人目に触れぬよう、お育て下さい」と言った。 「ええっ、本当ですか?」蕗が、喜びの顔をジュレームに向けると 「この世界の皆を助ける、蕗の望みだ、叶えてやらねばならぬ」 ジュレームは、にっこり笑って言った。 「有難う御座います、有難う御座います」蕗は、ジュレームにお礼を言い 「シゼル様、どうか宜しくお願い致します」と、シゼルにも、頭を下げた。 その後、蕗は王宮の一番東に有る、王妃ミリアの所へ行った。 ミリアは、ジュレームと同じ位の大きさになる様、お腹に布を巻いていた。 傍には、王子のジョアンも居る「ミリア様、お変わりございませんか?」 蕗は、侍女達の手前、そう言って、ミリアの傍に行った。 「みんな、下がって」ミリアの言葉で、侍女達は、部屋から出て行った。 「陛下のご様子は?」ミリアがそう訊ねる。 「順調で御座いました、ご安心下さい」「そう、良かった」 ミリアは、ほっとした顔になった。 ジョアンが「蕗、それな~に?」と、蕗の胸を指差して言う。 カルルが、ちょっと動いたのを、目ざとく見つけた様だ。 「これは、私の子供、カルルで御座いますよ」隠せないと思った蕗は そう言って見せた「わぁ~可愛い、私も抱っこしたい」 ジョアンは、そう言って「母上、良いでしょ」と、ミリアに言う。 ミリアは「ふ、蕗様、それは、、」と、青い顔になった。 「はい、このカルル、ジュレーム様が、飼っても良いとお許し下さいました」 「そ、そうでしたか、、それにしても、蕗様って、凄い方ですね」 そう言っていると「ねぇねぇ、蕗~抱っこ、抱っこ」と、ジョアンがせがむ。 「はい、でも、カルルは、生まれたばかりの赤ちゃんなんです。 そっと、抱っこして下さいね」 蕗はそう言うと、カルルをジョアンの腕の中に、抱かせてやった。 ジョアンは、小さな手でカルルの頭を撫で、嬉しそうな顔をして 「赤ちゃん、可愛い!!」と、頬をよせた。 いくら赤ん坊でも、ドラゴンだ、ミリアは、はらはらしていたが カルルは、首を傾げ「カルル」と鳴くと、ジョアンの頬を、ペロッと舐めた。 「あっ、カルルがキスしてくれたよ」ジョアンは、大喜びだ。 暫く遊ばせた後、蕗は「そろそろ、カルルのご飯の時間なんです」と言って ジョアンから、カルルを返して貰い、王宮から下がった。 「お帰りなさいませ蕗様、カルルは、どうなりました?」 レイモンドとマーラが、心配そうな顔で待っていた。 「飼っても良いって、陛下のお許しが出たわ」蕗がそう言うと 「良かったですね~」と、二人は喜び、デルフは 「蕗様、新鮮な海老が手に入りました、カルルの夕食に、どうでしょう」 と、聞く「海老?きっと喜ぶと思うわ」そう言っていると、侍女達が来て 「蕗様、カルルの寝場所を作りました、見て下さい」と言う。 行ってみると、ドーナツみたいな形に、丸い土手を作った布団が有る。 「大急ぎで、縫いました」「どうでしょう」 「これは良いね、上手く作ってある、有難う」カルルを、真ん中に すっぽり入れると、周りが、枕になって、寝心地良さそうだった。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加