58人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
侍従たちは「カルルが歩き回れるよう、家具の位置を、少し変えました」
と、言う「みんな、、カルルは処分されるかも知れなかったのに、、
こんな用意をしてくれていたの」蕗は、皆の心遣いが嬉しかった。
「蕗様の願いです、きっと陛下も、お聞き届けて下さると、信じていました」
マーラがそう言い、皆も頷く。
「有難う、これからも、皆の力を借りたいと思います、宜しくね」
蕗がそう言うと「お任せ下さい」と、レイモンドが力強い声でそう言った。
抱いていたカルルが、顔を蕗の胸に擦り付け「カルル、カルル」と鳴く。
「あら、お腹が空いたみたい」蕗の言葉に「では、早速、海老を」と
デルフは、厨房へ走り、深皿に、海老のむき身を入れて持って来た。
蕗が、小さなトングで、それをカルルの口に持って行く。
カルルは、口を大きく開けて、美味しそうに食べる。
「まるで、ひな鳥が、親鳥に餌を貰っている様ですね」カラジがそう言う。
「そうですね~」皆は、仕事を忘れて、カルルに見入る。
お腹が大きくなったカルルは、蕗の胸で、寝てしまった。
そっと侍女たちが作ってくれた、カルルのベットに寝せようとしたが
カルルは、嫌々と言う様に、蕗の胸から離れない。
「これじゃ、何も仕事が出来ないわね」蕗は、長い布を貰って
胸に居るカルルの身体を包み、肩から斜めに掛け、背中で、その布を結び
抱っこしていても、両手が開く様にして、薬作りをする。
「折角、ベットを作ったのに」と、嘆くエブルに、チャドが、何か教えた。
エブルは、蕗が、最も長く着ている寝巻を貰い、胸の部分だけを切り取って
中に、薄く綿を入れ、カルルのベットの中に置いた。
そこへ、眠くなったカルルを入れると、蕗の寝巻にしがみ付いたまま
寝てしまった「やったわ」侍女たちは「これで、蕗様も少しは、楽になるわ」
と、喜び「チャド、有難う」と、この事を教えてくれたチャドに、感謝した。
カルルは、皆に見守られながら、日増しに大きくなり、よちよち歩きも
しっかりとして来て、部屋の中を、歩きまわり、目が離せなくなった。
その頃、ミリアは困っていた、ジョアンが
「カルルを呼んで~」と言って、聞かないのだ。
動かない玩具と違うカルルと遊んだ事が、よほど、楽しかった様だ。
「カルルは、来れないのよ」と、言っても
「じゃ、僕が行く」と、言い張る、困り果てているミリアをしり目に
ジョアンは、ジュレームの所へ行き
「父上、僕、カルルの所へ行きたいの」と、訴えた。
「そんなに気に入ったのか、良いだろう、シゼル、お前
蕗の所へ、連れて行ってやれ」「ははっ」それを聞いたジョアンは
「わぁ~い、お父上、だ~い好き」と、ジュレームの首に、しがみ付いた。
「ははは、だけど、シゼルや蕗が、駄目という事は、しちゃ駄目だぞ」
「はいっ」ジョアンは、弾むような足取りで、シゼルの後に付いて行く。
幼い時から、きちんとした言葉を話すようにと、躾けられて
言う事は、大人びていても、まだ3歳、可愛い盛りだ。
父としてしか、接してやれない分、ジュレームは、つい甘やかしてしまう。
その思いは、シゼルも同じだった。
自分の子供であっても、自分の子供では無い。
ただ傍で、見守る事しか出来ない、これから先も、ずっと
自分は、ジョアンの家臣でしか無いのだ、そのジョアンに
フードの付いた服を着せ、馬の背に抱きあげて、自分の胸に抱いて座らせ
マントで包んで、馬を走らせる、しっかり掴まっている温かな温もり
目の前に有る、柔らかな髪、興奮で、キラキラと光っている
自分と同じ色の瞳、その愛しさに、シゼルの胸は、切なく揺れる。
最初のコメントを投稿しよう!