ドラゴンの卵

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「こ、これはシゼル様」蕗の屋敷は、思いがけない訪問者に、大騒ぎになった そして、シゼルが、マントの中に抱いていた物を降ろすと「あっ」 更に、皆は驚く、王子ジョアンだった。 「シ、シゼル様、これは?」レイモンドが、やっと口をきき マーラは、蕗を呼びに走った。 「驚かせて済まぬ、ジョアン様が、どうしてもカルルに会いたいと 仰せられてな」そう言っていると、蕗が走って来た。 蕗を見たジョアンは「蕗、カルルは?カルルはどこ?」と聞く。 「まぁ、ジョアン様、カルルに会いに来られたんですか?」「うん」 「それでは、蕗の部屋に行きましょう、カルルは、そこに居ますよ」 蕗と右手を、シゼルと左手を繋ぎ、蕗の部屋に行く途中で 「シゼル様、ジョアン様を持ち上げましょう」と蕗が提案し 「1,2,3、はいっ」と、二人は、ジョアンの手を持って、上に持ち上げた。 「きゃはは」ジョアンは大喜びで「もう一回~」と言う。 「1,2,3はいっ」また持ち上げる、3回それを繰り返して 蕗の部屋に着いた「カルル~~」ジョアンは、カルルを見つけて、走って行く 「ル?」カルルは、首を傾げていたが、ジョアンが抱きついて、キスをすると カルルも、ペロッとジョアンの頬を舐めた。 それからのカルルとジョアンは、部屋の中を走り回り 部屋の中だけでは足りないのか、廊下へ出て駆けっこをする。 カルルの歩きと、ジョアンが走る速さは、ちょうど同じ位で 抜きつ抜かれつの、楽しい駆けっこだった。 カラジが、どこからかボールを持って来て、ジョアンに渡し カルルに向けて、転がす様にと、教える。 「カルル~行くよ~」ジョアンが転がすボールを、カルルは、足で蹴って返す 返ってきたボールを、今度はジョアンが、足で蹴る。 その遊びは、両者にとって、この上なく楽しい様で、何時までも続けている。 時々、ボールが、大きくそれて、カルルの前に来ない時も カルルは、長い尻尾を使って、器用に返す。 「わぁ~カルルは、良いなぁ~尻尾が有って」ジョアンは、羨ましそうに言う 散々遊んで、疲れた頃を見計らって「おやつですよ~」と、蕗が声を掛ける。 カルルとジョアンは、遊びを止め、蕗の部屋で、おやつを食べる。 デルフが作った、美味しいケーキとミルク、カルルも、同じ物を食べる。 「カルルは、ケーキも食べるのですか?」シゼルが、驚いた顔で聞く。 「はい、私が食べていたのを見て、欲しがるので、やってみたら 気に入ってしまって」蕗はそう言いながら、シゼルと一緒に、緑茶を飲んだ。 「緑茶は、良いですね~心も身体も温まります」シゼルは、美味しそうに飲み「あ、見て下さい」と、部屋の隅を指差す。 お互いの身体をくっつけ、壁にもたれた、カルルとジョアンは もう、すうすうと寝息を立てていた。 眠ってしまったジョアンを抱いたシゼルを、目立たない様にと チャドの小さな馬車で送り、シゼルの馬は、カラジが乗って走り 一足先に、シゼルの馬小屋に戻し、シゼルとジョアンを降ろした馬車で 蕗の屋敷まで帰る「ジョアン様、とっても嬉しそうでしたね」 チャドがそう言うと「遊びは、子供同士が楽しいからな」カラジはそう言い 「ジョアン様も、もうすぐお兄さんになるんだ、兄弟が出来たら もう、カルルとも、遊ばないだろうな」と、言った。 「そうだね、カルルも、どんどん大きくなる、遊ぶどころじゃ無くなるよな」
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