ドラゴンの卵

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その言葉が終わらないうちに、また、警告の鐘が鳴る。 「また来たのかっ」再び、屋敷内に緊張が走ったが ドラゴンは、高い所を飛び、西の方へ去った。 「赤の国に行った様ですね」と、カラジが言う。 「赤の国が、襲われてるって事?」蕗が、聞く。 「はい、蕗様、怪我人が運ばれてくるかも知れません、用意しましょう」 「そうね」蕗は、病院へ行って、赤の国から運ばれて来るかも知れない 怪我人に備えた。 暫く待っていると、カラジが言った通り、赤の国から 続々と、怪我人が運ばれて来た。 その殆どが、商人達だった、黒のドラゴンは、街中に降り 強い羽ばたきと、長い尻尾で、逃げる人を襲い、その隙に グラディスは、商店の中の品物、台所用品や、農具など 手当たり次第に、持って行ったと言う。 蕗は、手当てをしながら「そんな物、どうするのかしら?」と、不思議だった ドラゴンは、そのまま、海へ向かって飛んで行ったと言う。 「海って、青の国に?」「いえ、もっと遠くに行ったようです」 一体どこへ行ったのだろう、蕗が、全ての治療を終え、一息ついていると ダニエルが来て「さっき、見張り所から、連絡が来ました。 黒のドラゴンは、羊を、赤のドラゴンの洞窟に置いて 直ぐに飛び立ったそうです、どうやら、赤のドラゴンと 子供の餌に、置いて行ったようですね」と、言った。 「暫く、留守にするって事かしら?」「そうかも知れません」 ドラゴンの国は、北の方角だと聞いた、南の海に、何が有るのだろう? それから、一週間ほどすると、黒のドラゴンが帰って来ていると言う 報告が有った、「誰も気づかなかったと言う事は 夜中に帰って来たんでしょう」と、カラジが言う。 「黒いから、夜だと分からないわね」その夜に、時々牧場が襲われ 羊や牛が、持って行かれたと言う事が有ったが、それ以上の被害は、無かった 「何だか変ですね」と、男性陣が言う「何が?」 「グラディスは、わざわざ昼間に来て、兵士達を襲って喜んでいたのですが」 「この頃、それが有りません」皆は、頷く。 「これでは、蕗様の回復薬キャンディも、出番が有りません」 「まぁ、出番が無いに越したことは有りませんよ」蕗の言葉に 「そうでした、つい」と、カラジが、頭を搔く。 そんな中でも、ジョアンはカルルの所に、遊びに来る。 カルルは、もう飛びたそうで、盛んに羽をバタバタさせていた。 「蕗様、王宮から急いでおいで下さいとの、急使が来ました」 ジュレームに、何か有った、蕗は大急ぎで駆け付ける。 まだ、9カ月だと言うのに、ジュレームは、産気づいていた。 ジュレームの母と祖母たち、ミリアが、人払いした部屋で 準備を進めていた、二度目と言う事も有り、準備は万端だったが お産は、命がけ、しかも双子だと言う事で、みんな緊張を隠せなかった。 「蕗、、」ジュレームは、陣痛を堪え乍ら、蕗の手を取る。 「何も心配は要りません、たとえ9カ月でも 赤ちゃんは、十分育っております」蕗の力強い励ましで、ジュレームは 安心して、陣痛と戦い、無事に、赤ん坊を産んだ。 男の子と、女の子の可愛い双子だった。 「わぁ~ちっちゃい」小さくても、元気に泣く赤ん坊を ジュレームは、愛しそうに抱いた。
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