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其の日も、ジョアンは蕗の屋敷にやって来た。
「いらっしゃいませ、ジョアン様」出迎えた蕗に、ジョアンは
「僕ね、お馬のお稽古してるの」と、報告する。
「まぁ、偉いですね~お馬、怖く無いですか?」蕗がそう聞くと
ジョアンは首を振り「先生が、お上手~って言うの」と、得意顔で言う。
ジョアンの声を聞きつけ「カルル~」カルルが、部屋から首を出した。
「あっ、カルル、来たよ~」ジョアンは、カルルにキスをすると
尻尾から背中によじ登り、林の中の、広場へと向かう。
ディグとビルドが、その後を追い、遊びの邪魔をしない様に警護する。
「ああして、カルルに乗っている所為か、馬も全く怖がらずに
上手に乗るんですよ」シゼルが、嬉しそうな顔と声で言う。
「カルルとジョアン様が、あれほど仲良しになるとは
思ってもいませんでしたね~」蕗は、シゼルにお茶を勧めながら言った。
シゼルは「カルルは、もう飛べるようになったんですか?」と聞く。
「はい、人目に付かぬよう、夜中に、こっそり飛ばせているのですが」
「夜中に?」「はい、ドラゴンの目は、暗い所でも、良く見える様なんです」
「そうか、それで、夜中の襲撃は、ドラゴンだけだったのか」
明るい時の襲撃は、背中にグラディウスを乗せているが、夜中は
黒いドラゴンだけで、家畜が襲われるのだと言う。
「飛んでいる時に、黒いドラゴンと遭遇しない様に、気を付けて下さい」
「はい、カルルは、リフの花畑の上しか飛びませんから
大丈夫だと思います」蕗は、そう答えた。
「そろそろ、国民に、カルルの事を知らせねばと、思っているのですが」
「皆さんが、混乱しない様な、良い考えが、有りますか?」
「お任せ下さい」シゼルは、自信有り気に言った。
ジュレームが出産して、一カ月が経った。
ジュレームの足が、すっかり治ったと言う、お祝いの行事が
行われると言うので、国民は、元気になった王様を見ようと
王宮の前の広場に詰めかけた。
王宮のテラスに、ジュレームと、ミリアが姿を見せた。
ジュレームは、第二王子を、ミリアは王女を抱いている。
「わぁ~っ」「ジュレーム様~」「お元気になられて、、、」
「おめでとうございます」皆は、喜びの声を上げ、すっかり回復している
ジュレームの姿に、大喜びをした。
次いで「ミリア様~」「無事ご出産、おめでとうございます~」
またも大歓声が起る。
シゼルが前に出て、皆の歓声を沈め
「今日の良き日に、紹介しよう、まず、第二王子エディ様だ」と言うと
ジュレームが、抱いていた王子を、高々と上げ、皆に見せる。
「わぁ~っ」「エディ様~」またも大歓声が上がる。
「そして、王女セリナ様だ」今度は、ミリアが、抱いている子供を
皆に見せる「わぁ~っ」「王女様~」「セリナ様~」またまた大歓声だ。
ジュレームが「皆の者、この二人の成長を、温かく見守ってくれ」と言うと
更に大きな、歓声が上がる。
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