対決

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対決

シゼルが、また前に出て、皆を沈め 「もう一つ、皆に紹介したいものが居る。 きっと驚くと思うが、心を静めて、よく見て欲しい」と言った。 その言葉を待っていた、カルルが、蕗に付き添われて、出て来た。 「きゃぁ~」「ド、ドラゴン!!」広場の皆は、恐れおののき その場から、逃げ出そうとする。 「皆の者、良く見よ!!」ジュレームの声が響き、皆は、足を止めて 声の方を見た「あっ」「ジョ、ジョアン様」驚きの声が上がる。 そのカルルの背中には、ジョアンが乗っていたのだ。 カルルは、ジョアンを乗せたまま、飛び上がり、広場の上を旋回した。 ジョアンは、背中から、見上げている皆に、にこにこしながら手を振った 「見たか、このカルルは、ドラゴンとはいえ、蕗様が育てられたので 非常に人に慣れており、我々に危害を加える事は無い、安心するが良い」 シゼルが、そう説明した、それでも、皆は、まだ怖そうな顔をしている。 カルルが、テラスに降りて来た、背中から降りたジョアンが 「有難う」と言って、背伸びし、首を下げたカルルにキスをした。 巨大で真っ赤なドラゴンと、小さな王子のキス、その微笑ましい姿は 国民の恐怖を、完全に取り去った。 見ていた蕗は、カメラが有ったら、この可愛い二人の姿を撮れるのにと 残念だった、どんなに大きく成長しても、蕗にとって カルルは、ただただ可愛い、我が子だった。 それから、一カ月ほど経った日、蕗が王宮に行くと 「蕗、これを見てくれ」と、ジュレームが案内したのは 迎賓の間だった、その中央の壁に、カルルとジョアンがキスをしている あの時の絵が、大きく書かれて、掛けられていた。 「まぁ、素敵!!絵にしてくれたんですね」 「あの時、見ていた宮廷画家が、感動したと言って、書いて来たんだ」 「嬉しいです、私も、あの瞬間は、永遠に残して置きたいと思っていたんです 蕗は、わざわざ宮廷画家の所にも行って、お礼を言った。 画家は恐縮し「こんなに喜んで頂けるとは、画家冥利に尽きます」と 目を潤ませて、喜んだ。 そして、ジョアンを乗せて飛んでいる、カルルの絵を呉れた。 蕗は、大喜びで屋敷に帰ると、皆が集まる食事の間に、掛けさせた。 カルルの事は、たちまち赤の国にも、青の国にも伝わり 本当に、ドラゴンが、人を襲わないのだろうかと、噂になっていた。 蕗が青の国に、出掛ける日になった、注文して作って貰ったリュックに 回復薬や如雨露など、何時もの道具を詰めて、背中に背負い 「じゃ、行って来るわ」と、馬車では無く、カルルの背に乗った。 「ふ、蕗様っ」「何と、何と言う事を」マーラと、レイモンドが、仰天する中 蕗は、カルルに乗って、空高く飛びあがり、青の国を目指して消えて行った。 暫くすると、シゼルが、馬を飛ばしてやって来て 「カルルが、南の方へ飛んで行ったと言う、報告が有ったのだが」と、聞く。 「は、はい、蕗様を乗せて、青の国へ、、」レイモンドが、そう答える。 「蕗様を?」驚くシゼルに「蕗様は、思った以上の、お転婆でございまして」 マーラが、小さくなって、そう言った。 「はっはっは、確かに、お転婆ですな」シゼルは、笑いながら、帰って行った
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