蕗 (77歳)

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カラジと呼ばれた、その男は、蕗に向かって、ぺこりと頭を下げると 「魔導士様、私はカラジと言います」と、言った。 蕗は、つられて「初めまして、蕗と申します」と、名前を告げた。 それを聞いた、中年の女性は「申し遅れました、私は、カラジの母 メイラと申します」と、自分の名前を告げた。 「何だよ、まだ自分の名前も言ってなかったのか」カラジはそう言うと 若い娘を差し「こっちは、姉のリエラ、そして彼奴が」と、ドアの前で 恥ずかしそうに、頬を染めている男の子を指差し 「弟のチャドです」と、言い「初めましてと言われましたが、私は 一番最初に、蕗様に会っております」「えっ」いつの間に?と言う顔の蕗に 「迷いの森で、蕗様を見つけたのは、私なんです」カラジは、嬉しそうに言う 『迷いの森?あの樹海は、そう呼ばれているのか』蕗は、そう思った。 「馬に乗って、夜回りをしていた時、迷いの森で、妖しい光が見えたので 傍まで行ったら、蕗様が居たんです」「そ、そうでしたか」 「何だか、具合が悪そうで、直ぐに気を失われたので うちに連れて来たのですが」「あ、、薬を飲んだので、ぼ~っとしてて、、」 蕗はそう言ったが、カラジは「こんな服じゃ、あまりに酷いよ、王様に 会いに行くんだからね、もっと、ましな服は無いの?」と、母に言う。 王様?そんな人が居るの?で、何で私が会いに行く訳?疑問を口にする前に ぱたぱたと駆けて行ったリエラが「これを羽織ったら、少しは、ましかな~」 と、ピンク色の薄い透けている服を持って来て、白い服の上から、蕗に着せた それを見て「まぁ、良いか」と言ったカラジは「では、参りましょう」と 蕗の手を取り、外へ連れ出した。 外には、蕗を一目見ようとする、人だかりが出来ていた。 「チャド、頼む」「はい」チャドは、傍の馬車の御者台に座り カラジは、蕗と一緒に、馬車の中へ入って座った。 「はいっ」チャドが、鞭を振ると、馬車はガタゴトと走り始めた。 「ねぇ、私、なんで王様に会いに行くの?」蕗は、そう聞いてみた。 「蕗様は、もう、この国の一員になりましたからね~ まず、王様に会って、身分を決めて貰わないと」「身分?」 「はい、王様は、必ずこう言います、早く回復薬を作ってくれと」 「えっ、何で分かるの?」「前の癒しの魔導士様が亡くなって、三年経ち 作り置きの薬が、もう無くなっているからです」 「でも、私、薬なんか作れません」「大丈夫、前の魔導士様に仕えていた 薬師が、作り方は、教えてくれます」「それなら、その方が、薬を作れば?」 「それが、その薬に魔法をかけ、回復薬にするには 蕗様の力が必要なんです」「私には、そんな魔法の力は有りません」 「何をおっしゃいます、こうして、私共と話が出来るでは有りませんか。 自然に、魔法を使っているからですよ」「えっ、これ?そうなんだ」 「王様に頼まれた事は、何でも、承知して下さいね。 それから、王様は、土地や建物などを下さる筈ですから、その時は 有り難く受け取って下さい、決して、要らないなんて言わないで下さいね」 「どうして?」「王様が、悲しむからです」「、、、分かりました」 カラジが、色々な事を教えているうちに、馬車は、お城に着いた。
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