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カルルは、魚の群れを追いかけたり、揺らめく海草の林に見とれたり
時々海面に顔を出して、息継ぎをしながら、海の中を楽しんでいたが
のっしのっしと、浜へ帰って来た。
「カルル、泳げたのね~吃驚しちゃった、でも、これじゃ、乗れないわね」
カルルの身体からは、海水が、ぼたぼた落ちている。
ルシアンが、傍の者に何か言い付けた「ははっ」と言った家臣は
「皆の者、バケツを持って井戸に集まれ」と、見ている人々に言った。
それだけで、何をすれば良いか、皆には、分かったらしく
沢山のバケツが、井戸に集められ、大人達は、カルルの傍まで一列に並んだ
バケツリレーが始まった、運ばれた水は、カルルの身体に掛けられ
海水を洗い流す、カルルは、気持ち良さそうに、じっとしていた。
「よ~し、そこまでっ」バケツリレーは終わり、最後のバケツは
カルルの前に置かれた、カルルは、その水を美味しそうに飲んだ。
大人達は、全員カルルの身体の左側に集まり、一斉に風を送る。
見る見る、カルルの身体が乾いて行く。
今度は右側だ、すっかりカルルの体を乾かして貰い
「皆さん、有難う」蕗は、笑顔で見ている皆に、お礼を言うと
「ルシアン様、お世話になりました」と、ルシアンにもお礼を言った。
「こちらこそ、いつも、皆がお世話になり、有難う御座います」
「いいえ、では」と、蕗がカルルに乗ろうとすると
「蕗様、これを」「これも」「これも」女達が、手に手に
魚介類や、海草、魚の干物などを蕗に持たせる。
「皆さん、いつも有難う、遠慮なく頂きます」蕗は、にっこり笑って
それもカルルの背中に積んで「またね~~」と、空へと飛んだ。
「カルル、今度は、いつ来るかな~」
子供達も、手を振りながら、そう言い合った。
その話を聞いた、赤の国の子供達は「良いな~赤の国にも
カルルって言うドラゴン、来ないかな~」と、父親に言う。
「そうだな~我が国は、狭いからな~ドラゴンが来れる場所と言えば
王宮広場くらいだろう、来ても、お前達とは、遊べないだろうな~」
「え~っ、つまんない、僕もドラゴンに乗りたい」子供は、ぷっと膨れた。
翌月、蕗は、赤の国にも、カルルに乗って行った。
事前に、マンセルには、カルルに乗って行くと伝えていたので
王宮広場に、人の姿は無かった。
だが、カルルが広場に降りると、大勢の人が、カルルを見に来た。
大人達は、広場の隅に集まっていたが
子供達は、一斉に親の手を振り払って、カルルの所に、集まった。
「カルル、皆と、遊んでおいで」蕗がそう言うと「カルル~」
返事をしたカルルは、子供達を、背中に乗せて飛び
緑の国の草原へ降ろした。
三度往復して、全ての子供を草原に降ろすと、一緒に遊び始めた。
こんな草原で遊んだ事の無い、赤の国の子供は、大喜びで
カルルと一緒に、駆け回ったり、でんぐり返しをしたり
花を摘んで花輪を作り、カルルの首に掛けてやったりと
思い思いの遊びに夢中だった。
遊び疲れた子供達は、カルルに乗って帰って来て
待っていた両親に、楽しかった話をした。
「そうか、そうか」「良かったなぁ~」両親は、カルルにお礼を言い
子供達は「カルル、またね~」と、手を振って、帰って行った。
リュックを背負った蕗が、仕事を終えて出て来た。
「蕗様、今回は、子供までお世話になって、本当に有難う御座います」
国王マンセルは、深い感謝の言葉を述べた。
「いいえ、カルルは、子供と遊ぶのが大好きなんです、こちらこそ
有難う御座いました」蕗がそう言って、カルルに乗ろうとすると
「蕗様、ご注文の品が、出来上がっております」と
走って来た鉄職人が、蕗に荷物を渡した。
「まぁ、有難う」「蕗様、これも」「これも」赤の国でも
沢山の、お土産を貰い、蕗は、カルルに乗って帰って来た。
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