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蕗が、赤の国から持って帰った包みを開ける。
「まぁ、可愛いベル」見ていたキャラが、そう言い
「でも、持ち手が有りませんね」と、サイラが、不思議そうな顔をする。
「しかも、天辺に穴が開いていますよ」イスラも、怪訝な顔で言う。
「これは、ベルとして使うんじゃないのよ」
蕗はそう言うと、デルフから肉を縛る強い糸を貰って来て
一緒に包まれていた、小さなコインの、上の穴に通し、その糸を
ベルの天辺に開いている、穴に通して、ぶら下げられるようにし
コインの下の穴には、青い紙を短冊に切って、結び付けた。
「それは、いったい何ですか?」マーラも、首を傾げる。
蕗は、手でぶら下げた、風鈴の短冊に、ふぅ~っと息を吹きかけた。
ちりり~ん、澄んだ綺麗な音が響く「ね、良い音でしょ」
「はい、確かに、良い音ですが?」「これは、風鈴と言ってね
私が、元居た国では、夏になると、これを軒下にぶら下げて
涼しい音を楽しんでいたの」蕗は、その様子を話してやった。
「そうでしたか、鉄で作ったベルが、これ程、良い音を出すとは」
「本当に、意外でした」皆は、代わる代わる、風を送って、その音を楽しんだ
そこへ、ウェルがやって来て、ダニエル様がお越しです、と言う。
「ここへ、お通しして」やって来たダニエルも「おお、良い音色ですなぁ~」
と、風鈴の音を楽しんだ後「カルルは?」と聞く。
「林の中の広場で、子供たちと遊んでいます」
「そうですか、この国の子供達も、カルルと遊ぶ様になったんですね」
そう言ったダニエルは「白い国のドラゴンは、ドラゴンの国に
子供を連れて行ったようですよ」と、教えた。
「そうですか、カルルは、このままここに居ても、良いのかしら。
ドラゴンの国に、帰した方が良いのかしら」
「それは、カルルが決めると思います、どうしても、ドラゴンの国に
行きたいと、思えば、私達が、いくら止めても、無駄でしょう」
「そうね、それまでは、一緒の暮らしを楽しみます」
蕗はそう言ったが、カルルと別れると、思っただけで、胸が一杯になって
涙が、出そうになる、若くなったのに、涙もろいのは、昔のままだわ。
蕗は、ぐっと涙を押し込んで、そう思った。
それから一週間後、久しぶりに、ジョアンが遊びに来たが
小型の馬に乗って、シゼルと一緒だった。
「まぁ、ジョアン様、馬に乗れるようになったんですね、ご立派です」
蕗や、屋敷の者も、皆で、ジョアンの凛々しい姿を誉める。
ジョアンは、嬉しそうな顔をした後、すぐに「カルル~」と呼ぶ。
「馬に乗るのも良いけど、僕、カルルに乗るのが、一番好き」
ジョアンはそう言うと、カルルの背中に乗って、どこかへ飛んで行った。
「お姿が、見えなくなりましたが、大丈夫でしょうか?」
レイモンドが、はらはらした顔で、シゼルに言う。
「心配ない、カルルが付いているからな、どこかの草原で
駆け回っているんだろう」シゼルは、風鈴の音と、美味しいお茶で
まったりしながら、そう言った。
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