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屋敷中の者が、蕗を止めたが、もう蕗はカルルに乗って、花畑の上だった。「止めなさいっ、大事な花に何てことするのっ」蕗が、大声で叫ぶ。
いきなり現れた、赤いドラゴンに、黒いドラゴンとグラディスは驚いたが
直ぐに、黒いドラゴンはグラディスを乗せて、空中に飛びあがる。
「誰だ、お前」闇の魔導士、グラディスが、しゃがれた声で、そう言った。
振り乱した白髪に、深い皺だらけの顔、目だけが異常にギラギラしている。
「この花畑の持ち主、蕗よっ」「と言う事は、癒しの魔導士って事か
そのドラゴンはどうした」「この子は、私の子供よっ」
「子供だって?」ひゃっひゃっと、変な声で笑ったグラディスは
「構わん、やれっ」と、黒いドラゴンに命じる。
その声に、黒いドラゴンは、大きく羽ばたき、カルルに接近すると
長い尾で、カルルを叩こうとした「ああっ、カルルっ」「蕗様っ」
見ている皆から、大きな声が出る、カルルは、素早くその尾を避けた。
そこへ、将軍ハルドを先頭に、最強の軍隊がやって来たが
「な、なんと、蕗様が、、」さすがの将軍も、驚きの声を上げる。
これでは、下手に攻撃すると、蕗に当たってしまう。
しかも、ドラゴン同士の戦いは、空高くで行われており、矢も届かない。
ハラハラしながら、見守るしか無かった。
今度は、カルルが攻撃し、黒いドラゴンが避ける。
長い、尾と尾がぶつかり合う、激しい攻防が続く。
「カルル、頑張れ!!」見ている皆は、手に汗を握り、大きな声援を送る。
「良いぞ、カルルが押している」ハルドが、そう叫んだ時
グラディスが、真っ黒な闇の塊を、蕗にめがけて放ち
もろに体に受けた蕗は、カルルの背中から、吹き飛ばされた。
「きゃぁ~っ」「蕗様~~っ」見ている皆から、悲鳴が上がった。
マーラと侍女たちは、両手で顔を覆う。
カルルは、くるりと体を回し、背面飛びをしながら、落ちて行く蕗を
前足で、しっかり抱きとめた。
「はぁ~っ」皆の口から、安堵の息が洩れる。
蕗を抱いたまま、体を戻したカルルは「ガルルル~~」聞いた事も無い
怒りの声と共に、灼熱の炎を、黒いドラゴンに向かって吐いた。
黒いドラゴンは、その炎を避け損ね、体の一部を焼かれた。
「いかんっ、一旦戻れっ」グラディスが叫び、黒いドラゴンは
一目散に白い国へと、逃げて行った。
なおも、追いかけようとするカルルに「カルル、もう良いわよ」
蕗は、優しくカルルの胸を叩いて「帰りましょう」と、言った。
蕗とカルルが帰って来ると「蕗様、お怪我は?」
屋敷中の者が心配して、取り囲む。
「大丈夫、闇の塊は、体に当たっただけだから、どこも、何とも無いわ」
蕗の言葉に、皆は、ほっとした後「カルル、頑張ったな~」と
カルルを褒めた「カルル~」カルルは、褒められて、嬉しそうだった。
「しかし、驚きましたな~カルルがあの様な、炎を吐くとは」
ハルドが、蕗に言う「私も驚きました、こんな事は、初めてです。
近々、ダニエルさんに、カルルの能力に付いて、聞きに行って来ます」
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