対決

6/9

58人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
屋敷中の者が、蕗を止めたが、もう蕗はカルルに乗って、花畑の上だった。「止めなさいっ、大事な花に何てことするのっ」蕗が、大声で叫ぶ。 いきなり現れた、赤いドラゴンに、黒いドラゴンとグラディスは驚いたが 直ぐに、黒いドラゴンはグラディスを乗せて、空中に飛びあがる。 「誰だ、お前」闇の魔導士、グラディスが、しゃがれた声で、そう言った。 振り乱した白髪に、深い皺だらけの顔、目だけが異常にギラギラしている。 「この花畑の持ち主、蕗よっ」「と言う事は、癒しの魔導士って事か そのドラゴンはどうした」「この子は、私の子供よっ」 「子供だって?」ひゃっひゃっと、変な声で笑ったグラディスは 「構わん、やれっ」と、黒いドラゴンに命じる。 その声に、黒いドラゴンは、大きく羽ばたき、カルルに接近すると 長い尾で、カルルを叩こうとした「ああっ、カルルっ」「蕗様っ」 見ている皆から、大きな声が出る、カルルは、素早くその尾を避けた。 そこへ、将軍ハルドを先頭に、最強の軍隊がやって来たが 「な、なんと、蕗様が、、」さすがの将軍も、驚きの声を上げる。 これでは、下手に攻撃すると、蕗に当たってしまう。 しかも、ドラゴン同士の戦いは、空高くで行われており、矢も届かない。 ハラハラしながら、見守るしか無かった。 今度は、カルルが攻撃し、黒いドラゴンが避ける。 長い、尾と尾がぶつかり合う、激しい攻防が続く。 「カルル、頑張れ!!」見ている皆は、手に汗を握り、大きな声援を送る。 「良いぞ、カルルが押している」ハルドが、そう叫んだ時 グラディスが、真っ黒な闇の塊を、蕗にめがけて放ち もろに体に受けた蕗は、カルルの背中から、吹き飛ばされた。 「きゃぁ~っ」「蕗様~~っ」見ている皆から、悲鳴が上がった。 マーラと侍女たちは、両手で顔を覆う。 カルルは、くるりと体を回し、背面飛びをしながら、落ちて行く蕗を 前足で、しっかり抱きとめた。 「はぁ~っ」皆の口から、安堵の息が洩れる。 蕗を抱いたまま、体を戻したカルルは「ガルルル~~」聞いた事も無い 怒りの声と共に、灼熱の炎を、黒いドラゴンに向かって吐いた。 黒いドラゴンは、その炎を避け損ね、体の一部を焼かれた。 「いかんっ、一旦戻れっ」グラディスが叫び、黒いドラゴンは 一目散に白い国へと、逃げて行った。 なおも、追いかけようとするカルルに「カルル、もう良いわよ」 蕗は、優しくカルルの胸を叩いて「帰りましょう」と、言った。 蕗とカルルが帰って来ると「蕗様、お怪我は?」 屋敷中の者が心配して、取り囲む。 「大丈夫、闇の塊は、体に当たっただけだから、どこも、何とも無いわ」 蕗の言葉に、皆は、ほっとした後「カルル、頑張ったな~」と カルルを褒めた「カルル~」カルルは、褒められて、嬉しそうだった。 「しかし、驚きましたな~カルルがあの様な、炎を吐くとは」 ハルドが、蕗に言う「私も驚きました、こんな事は、初めてです。 近々、ダニエルさんに、カルルの能力に付いて、聞きに行って来ます」
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加